読書感想:殺したガールと他殺志願者2

f:id:yuukimasiro:20210324233500j:plain

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:殺したガールと他殺志願者 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

それは、最高で最悪なボーイ・ミーツ・ガール。というのは某作品の一巻のうたい文句である。これは特に関係ない、訳であるがこの作品の主人公である水面とヒロインであるみぎりもまた、ある意味最高で最悪な巡り合わせの元に出会った二人で在り、行く末はメリーバッドエンドが保証された二人である。では一巻で正に二人して転がり落ちて共に死ぬかのような契約を結んだ二人は、一体どんな方向へと進んでいってしまうのだろうか。

 

その答えは、既に表紙で示されている。幾多もの文字が綴られた頁の中に横になり、みぎりが見つめているもの、それは紛れもなく日記である。日記とは何か。それは記憶を残すもの。そう、今巻のキーワードとなるのは「記憶」である。

 

ある日水面に示された、自らと同じ「虚構人格」を持つ女性の話から導き出された可能性。精神崩壊を防げるかもしれないという、蜘蛛の糸であるかのようなか細い可能性。

 

 それは、幸せな出来事が起きた事だけを覚えているというぼんやりとした言葉。何も特別なことはしていない、けれど何故か生きていられる。

 

「いつどこで何をしたのかは覚えてない。けど、幸せだったことだけはハッキリと覚えてる。この感情は本物だよ、絶対に」

 

見つけ出した淡い希望。みぎりと共に死ねるかもしれないという淡い希望。

 

だがしかし、その希望は唐突に、完膚なきまでに打ち砕かれる。恋人であるみぎりの、突然の記憶喪失という出来事で。

 

水面という存在を何も覚えていない。自分には水面よりも段違いに格好いい彼氏がいたはず。しかし、その思い込みは虚構である。彼女の歪んだ心が生み出した幻覚である。

 

「恋人探し、手伝わせてくれ」

 

その恋人が見つかる事は無いと分かっているけれど、それでもとみぎりへの協力を申し出る水面。

 

ある時は平日に安上がりに旅館にお泊りしたり。またある時は、遊園地で脅かし合ったり。

 

 普通の恋人同士の生活に見えて、その根底にあるのは虚無、そして忘却。けれど、その根底にあるのは確かに愛。二人がお互いへ向ける愛なのである。

 

例え自分を失ってしまったとしても、例え何もかも忘れてしまったとしても。心の中に消えない想いがある。だから、またいつも何度でも。もう一度とやり直せる。

 

「満月が綺麗な理由を知ったんです」

 

喪失の先、また訪れる喪失。そこに待っていたのは哀しい結末。何処までも残酷で、救いが無くて、これもまた一つのバッドエンドと言える結末。

 

だが、まだ二人の終わりは訪れていない。ロマンチックで二人らしい、こんな結末を迎えていても尚終われない。更に歪んで捻れていく想いは止まらず加速し続ける。

 

だからこそ面白い。何処か儚く切ないからこその美しさが、今巻で更に上がっているのだ。

 

前巻を楽しまれた読者様、何処にもないラブコメを読んでみたい読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

殺したガールと他殺志願者2 (MF文庫J) | 森林 梢, はくり |本 | 通販 | Amazon