読書感想:塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い5

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前巻感想はこちら↓

読書感想:塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い4 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、突然ではあるがまずはこの表紙を見てほしい。今までとは雰囲気の違う、佐藤さんの何処か悪戯っぽい顔である。何処か小悪魔ちっくな可愛さも出している、前巻までの表情とは違う表情である。では一体、何故に彼女はこのような顔をしているのだろうか? その理由へと触れていくのが今巻であり、思わず苦笑いしてしまうかもしれぬ恋愛模様が描かれるのが今巻なのである。

 

 

「・・・・・・えへへ、私そんなに押尾君のこと喋ってたかなぁ?」

 

「毎日! 昼休みのたび! 飽きるほどに! 耳にタコができるわ!」

 

前巻で恋人である押尾くんの可愛い所を見たからか、心の中には小さな野望。そして前にも増して高まった彼への恋心。前巻で友人となった澪に思わず溜息をつかれ全力でツッコまれるほどに。今日もまた、昼休みに繰り広げられる佐藤さんの惚気という一幕。

 

「颯太、俺はお前が情けないよ」

 

 対し、彼氏である押尾君は近頃精彩を欠いていた。親友である蓮に思わず溜息を吐かれ、だが嫌味も思い浮かばぬ程に。情けなくも佐藤さんに完全に手綱を握られるという醜態に焦りを覚えていたのである。

 

段々と大人になりつつある佐藤さんとは違い、未だ成長せぬまま。このままでは玩具にされて飽きられる。そんな危機を打開すべく、彼は友人たちの力を借りデートに臨む事にする。

 

デートの舞台となるのは、寂れた動物園、三輪アニマルランド。大観覧車が売りの、高所恐怖症の押尾君にはある意味で鬼門とも言える場所。

 

 しかし、そのデート現場に集ったのは二人だけではなかった。威厳を取り戻したい押尾君と、彼氏の可愛い顔の写真が欲しい佐藤さん。それで済む事が無かったのである。

 

 

妹である凛香の恋路をかき乱す為に彼女をつり出した姉である京香。二人の絆を引き裂かんとする塩対応の佐藤さんファンクラブの残党。そして友人のデートを野次馬せんとする澪達親友組。

 

 こんな面子が揃ってしまっては、何が起きるかはもうお分かりであろう。どう考えてもカオスな事態である。どこかの恋愛漫画にも負けない、どうしてそうなるという事態である。

 

邪魔をしてこようとするファンクラブ、その流れに水を差さんとする親友達、その裏で更なる混沌の呼び水となる京香達。

 

「・・・・・・無理ぐらいさせてよ」

 

「―――佐藤さんが、そんな俺を好きになってくれたから」

 

 けれど、そんな混沌の中でも二人は向き合う。向き合い、不器用でも二人の時間を積み重ね、時に本音をさらけ出し受け止め合ったりして。また一つ、二人だけの思いを積み重ねてもっと特別になっていく。

 

混沌のドタバタと、どこか苦笑いしたくなる大騒動。たった一日を描いているだけなのに、どこまでも濃厚な、けれど確かに甘くて面白い今巻。

 

シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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