読書感想：主人公にはなれない僕らの妥協から始める恋人生活２

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前巻感想はこちら↓

　さて、私はこの巻の感想を書いていく前に一つ、皆様に残念なお知らせをしなくてはならない。それは、この作品が今巻で打ち切りによる完結を迎えるという事である。返す返すも残念であるが、作者様がアナウンスしてくれているだけまだ救いはある、と言えるのかもしれない。

では秀侑と乃菜、ニセモノな二人の秘密の関係は何処へ行くのだろうか。「妥協」から始まったニセモノな恋路は、果たして何処へと行くのだろうか。

そんな問いかけに明確な答えを出すことは難しい。これからまだ、二人の関係は深まっていくと言えるのだから。しかし、今巻で一つ、大きな波乱が巻き起こるのは確かである。

乃菜が意外な姿を見せた体育祭も終わり、夏休みも迫る中。乃菜と共に江の島へデートで出向いたりと、ニセモノながらもまるで本物のように過ごす二人。

　しかし、既に不穏の予感はすぐそばまで迫っていた。夏休み前の一大イベント、東京散策。秀侑及びその友人である隆一と詩音は三人で組むも一人足りず。そこで詩音が半ば強引に引っ張ってきたのが、一人あぶれていた乃菜だったのである。

仲良くしたくないと言わんばかりに何処か突き放した態度を取る乃菜にもめげず、ぐいぐいと距離を詰めていく詩音。気が付かぬ間に不満は降り積もり、何処か不協和音は流れ出し徐々に高まっていき。お互いの関係を秘密にしているが故のもどかしさと隆一と詩音の間の関係への邪推が、東京散策の中で暴発の時を迎える。

　暴発してしまい自責の念に駆られる乃菜に寄り添い、彼女を支える秀侑。その先、散策の後日。詩音から二人揃って呼び出された先で聞かされたのは謝罪と隆一と詩音の間にある過去。彼等二人の間の絆を秀侑が繋いでいた、という絆の証。

そう、絆である。秀侑と隆一、そして詩音の三人で繋がって形成された不変の絆である。それは恋愛の色をしておらず、友情の色しかしていない。だからこそ、この関係はきっと、何処まで行っても変わらない。

「それは一生付き合い続けていくんじゃないか？」

だからこそ、もしかしたら。この恋愛感情を伴わぬ「ニセモノ」の恋はいつか「本物」に変わるのかもしれない。そんな関係も悪くはないと思えてしまうからこそ。いつかの希望の目が今、芽吹く。

最期まで何処かもどかしくこそばゆく、けれど温かい。そんな独特の面白さのある今巻。

返す返すも、残念である。