
さてさて、時に画面の前の読者の皆様も自由に生きたい、と思われたことがあるかもしれない。この世の中、自由に生きるというのは簡単にできる訳でもないのだが。ではどんな世界であれば、自由に生きられるのだろうか。例えば北斗の拳のような世界観だろうか。あの世界も世紀末なので、誰も及ばぬ力を持たなければ自由どころの騒ぎではないのだが。
と、まぁどんな世界でも自由に生きていくのは中々に難しいわけであるが。この作品における主人公、ヤマギシ(表紙左)は自由に生きていくことを決めた者であり。途中で出会ったハーフエルフの少女、フェルン(表紙右)とともに全ての軛を解き自由に生きていくお話なのだ。
異世界の国、トラバ国とベルディ国。トラバ王国北側の前線で戦いを繰り広げる二国。だが前線はヤマギシの活躍、言い換えると孤軍奮闘により保たれており。ヤマギシは敵国の兵士から「狂乱のバーサーカー」と呼ばれ、戦うくらいなら、と勧誘されるほどだった。
「一つ言っておく。俺は血を見ると殺意が高まるんだ。幼少期の環境が悪くてな」
が、ある日。彼は軍上層部から虚偽の報告を疑われ捕らえられ、更には味方殺しの冤罪をかけられ、反抗してきたから対処したという名目で殺されそうに・・・・・・なったのだが。上層部の無能は見誤っていた。ヤマギシの強さを。戦場モードに一瞬でスイッチが入ったヤマギシは襲い掛かってきた者たちを殲滅、似たように捕まっていたフェルンを助け、一先ずは勧誘してくれたベルディ国を目指し歩き出す。
「そうなんだ? でもあいつら弱かったぜ」
では彼が抜けたトラバ国はどうなっているのか。当然、北部前線は崩壊した。慌てた国王たちがヤマギシとフェルンを狙い追手を差し向けているとも露知らず、二人は、フェルンの兄の仇である魔族を探すという目的も持ちつつ、冒険者として一気に注目を集めていた。蛮族的活躍でヤマギシが戦闘を、精霊と対話できる力でフェルンが採集を担いながら。実はトラバ国こそ悪の枢軸、という話を知ったりもしつつ。その活躍が、周囲に知られその強さに惚れられていったりする中。ベルティ国の「虐殺部隊」の二人、アルネとコーハイは、トラバ国からの追手部隊の一人、マンビキがヤマギシの行方を知っていたことで行動を共にする事になり。戻る途中、凶暴な、ベルティ国にはいない筈の魔物の群れに襲われてしまうことに。
「”最強”が助けにいったみたいだ」
更に同時、トラバ国からの数万の軍勢の侵攻が発生し。騎士団はそちらへの対応を強いられる中、ヤマギシは咄嗟の判断でアルネ達を助けに飛び出していく。
「―――じゃあ久しぶりにギアを入れるかァ」
迫る魔物の群れを圧倒、アルネ達を助けトラバ国との戦場へ。その中、ヤマギシの枷は解かれギアが上がる。どこか人とは違う価値観を持っていた彼の本性、その生まれからくる殺戮性が遠慮なく解放され。その場にいた、フェルンの兄の仇である魔族、グレイも含め全員ぶち殺すまで止まらない、「狂乱のバーサーカー」としての本性が目を覚ます。
「私に、考えがあります」
その悲しげな背を止めるため、暴れまわる彼を止めるためにフェルンが皆とともに命を懸けてヤマギシを止め。新たな目的をもって、日々は続くのである。
混ざりものな二人が出会い、蛮族的だった青年が徐々に人間らしくなっていく。自由に暴れ蹂躙していくこの作品、ヒャッハー的爽快感が好きな方はぜひ。きっと貴方も満足できるはずである。
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