読書感想:昔クラスの女子を守れなかった俺の人生やり直し。

 

 さて、時に画面の前の読者の皆様は目の前で襲われている人がいるとして、咄嗟に助けることが出来るであろうか。勿論それはそう簡単な話ではない。勇気があれば、という話でもないだろう。助けに入ったところで助けになれるか、というのは別の話である。だがしかし、勇敢なる者こそが偉い、という事もあるのかもしれない。

 

 

という訳でこの作品はどんな作品か、というと。かつて守れなかった、という後悔を抱えた少年、東悟(表紙左)が岩をも通ず一念で過去にタイムリープし、守るために強くなるお話であり。クローズやらバキ並みに治安やら何やらが終わり散らかしている奴ら相手に、バイオレンスに戦い抜くお話なのだ。

 

2016年の夏休みの終わりに起きた、平成最恐の殺人事件、西府中首無し女子高生事件。周囲からの人気も高かった二人の少女、碧(表紙中央)と美優季(表紙右)が性暴力を受けた首なし死体として、高校の職員用トイレで見つかったという事件。都市伝説の殺人兄弟、超武闘派な二つの不良グループ、違法な人身売買組織の関与が噂されるも、結局真実は解き明かせず。その二十年後、死病に侵された東悟は後悔の中にいた。最後に二人に会ったのは自分、だからこそなぜ守れなかったのか、と。

 

「でもさ、ボクが叔父さんの空手を覚えたらさ、ちゃんとお母さんを守ってあげられるよ」

 

守りたかったという後悔、その芯にある二人にすごいと思われたかった、という煩悩的な願い。その願いが、通じたのか。東悟は七歳の自分にタイムリープし。裏格闘家にして「魔術師」と呼ばれる重度のシスコンの叔父、泰親から古流武術を習うことに。

 

「よく見ろ。俺は死ぬ気でやってる」

 

覆すべきはあの日、それだけ。なればそこまでの日々は臥薪嘗胆。馬鹿か麒麟児か、と泰親に感心されつつ、暴れる訳にはいかぬが、都心部の裏路地で正体を隠しカツアゲしている不良を狩ったりしながら。いよいよ高校生となって、迎えるのは二度目の出会い。

 

またあの日のように仲良くなり、二人をボディガードのように守りながら。そんな中、遂にやってきたあの日。明かされたのは、関与が噂された全てがかかわっている、という事。意外と真相は、彼にとっては下らないものであった、という事。

 

「俺の進む道は、ずっと虚仮の道でいい」

 

立ち塞がるのは倫理観のぶち壊れた奴ら、組織。だがそんなものはどうでもいい。守る為なら、過剰防衛何のその。まとめて全員ぶっ飛ばし、きっちりと乗り越えて。

 

「東悟くんって実は凄い人なんだから!」

 

その果て、迎えるのは未知の明日、二人がいる日々。願いが叶う時、という事である。

 

一念で強くなり、バイオレンスな修羅場を全部ぶちのめしていくこの作品。バイオレンスな作品が読みたい方はぜひ。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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