読書感想:義妹生活5

 

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読書感想:義妹生活4 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻の最後にお互いの思いを擦り合わせしたい、という悠太からの提案を受け、始まる新たな関係。沙季は義妹である。表においては、仲がちょっとよいだけの義兄妹である。しかし、裏においては少し違う。裏の関係は、恋人、と呼んでいいのだろうか。否、まだ呼べぬかもしれない。恋人と呼ぶにはちょっと遠い、けれど確かにほんのりと甘さのある。「兄妹」であり、「恋人」のようで。名前のない関係の中で始まるのが今巻である。

 

 

しかし画面の前の読者の皆様も何となくお察しではないだろうか。確かな関係性の変化があったと言う事は、段々思いが変化する引金は引かれてしまった、という事を。もうそれは止められぬ、という事を。

 

恋人同士ではないから、別に学園祭も特段大切なことがあるわけではない。しかし二人を待っている新たなイベント。誰もが皆浮かれ騒ぎ踊るハロウィン。幻想的な灯に込められた魔力が、引き金となっていくのである。

 

無論、それは今巻における最後の光景である。そこに至るまでにも細やかで当たり前の日々が訪れる。

 

沙季の友人の誕生日パーティーに招かれたり。ひょんな事から二人でデートすることになり、沙季が悠太の服を見繕うという、恋人らしいイベントもあったりして。

 

「仲、良いじゃん?」

 

「だけどその前に一つだけ確認しておきたいことがあるんだ」

 

 そんな当たり前の日々の中、真綾を始めとして二人の「変化」に気付く者達が徐々に増えていく。水面下で二人の関係が疑われ、興味を惹いていく。視線の中で、悠太と沙季の心に「変化」の波紋が芽生えていく。異性には期待していなかった筈の心に、お互いと言うかけがえのないものが嵌り、心を埋めていく。

 

「この答えで、満足してくれると嬉しい」

 

例えこれが恋愛感情だったとしても、大体的に公表すると言うのはありえない。だけど、自分だけの答えは分かっている。彼女の心は分からない、けれど自分の中の思いは確かである。

 

「悪魔の時間だね。きっとハロウィンの灯りには魔力があるんだ」

 

 それは、きっと沙季も同じだったのかもしれない。そして悠太の心の中、悪魔は悪戯っぽく、けれど優しく囁く。そしてささやかな明りに引き寄せられるかのように。悠太と沙季の関係は、確かに変化の時を迎えるのである。

 

踏み出してしまったその変化。知ってしまったその温もり。きっとそれは、もう止まれぬという事実を告げるもの。

 

確かな変化の音が鳴る今巻。果たして次回はどんな変化が待っているのか。

 

シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。