読書感想:弥生ちゃんは秘密を隠せない2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:弥生ちゃんは秘密を隠せない - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で主人公である皐月の心の救済には成功し、弥生との心の距離も近づき、万々歳・・・と言えれば良かったのであるが。果たして画面の前の読者の皆様は、彼等の恋がここからすんなりと発展していくと思われているであろうか。もし恋の障害になるのならば、一体何がなるのか。その答えを先に述べてしまうのであれば、皮肉にもそれは彼等を結び付けた「超能力」に他ならぬのである。

 

 

「このままじゃダメだ・・・・・・」

 

好きになったからこそ嫌われたくない。もう本当の弥生を見失いなくない。サイコメトリーという大きすぎる秘密を隠したまま、自分に彼女を好きと言う資格はあるのだろうか? 関係が深まり、少しずつ弥生との距離も近づいていく中。皐月は一人思い悩んでいた。それは恋は平等だと言う、卯月の言葉に反していたから。それに反するかのように自分は知り過ぎている。でも、と。思春期のもどかしさと臆病さ故の若い悩みに振り回されていたのである。

 

 そんな彼の隙を突くかのように、母親からのお願いを受け調査のために接近してくる卯月。彼女はある意味で強力な味方を得てしまう。その名は早苗。兄の恋路の行方を心配する妹が、妹同士で手を結んでしまったのである。

 

そんな二人が手を組んだらどうなるかはお分かりであろう。思春期の女子だからこそのコイバナへの興奮と情動に突き動かされるように。二人でぐいぐいと攻め込み、果てには皐月と弥生のデートにも、何だかんだと理由を付けて同行していく。

 

それを当然、許せるわけもなく。弥生は不機嫌となり、どこか卯月にも刺々しくなり。その対応と、自分の思いの狭間で。卯月もまた、思い悩んでいく事になる。

 

母親からの教えである、常に駒として冷静である事。そういられれば良かった、けれどそれは簡単な事ではない、ましてや年頃の多感な乙女に簡単にできる事ではない。 二人の恋路の中、入り込めぬと思い知らされながら。それでも、今芽生えた負けたくないと言う思いに振り回される卯月。

 

「俺、弥生ちゃんに言わなきゃいけないことがあるんだ」

 

 その思いを知り、責める資格もないと自分に言い聞かせ。意を決し皐月は弥生に秘密を打ち明ける。だがそれは弥生の混乱を招き、更には意外な相手にも偶然、その秘密は露呈してしまう。

 

まるで足元を突き崩されるかのように、突如として波乱の大嵐で飲み込んでくる今巻。果たして関係性が大荒れの嵐を迎える中、どうなってしまうのか。

 

次巻、刮目していきたい。

 

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