読書感想:経験済みなキミと、 経験ゼロなオレが、 お付き合いする話。 その6

 

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読書感想:経験済みなキミと、 経験ゼロなオレが、 お付き合いする話。 その5 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、今巻の感想を書いていく前に皆様、表紙の月愛を見て何か違和感を覚えられたりしなかったであろうか。何というか、前巻よりもちょっと大人っぽくないか、と。その違和感は間違っておられない。何と今巻は前巻の出来事から三年後、龍斗や月愛がオトナになった時間軸となっているのだ。決してキング・クリムゾンをくらっている訳ではないので安心して欲しい。と、言う訳で中々に挑戦的な方向へ踏み出したサプライズ、から始まるのが今巻なのである。

 

 

そも、ニ十歳となった、という事は高校は卒業しているという事である。つまりはどういうことか、それは進路が分かれるという事。進学する者もいれば、就職する者だっている。段々大人になっていく、その時間は待ってはくれない。だからこそ皆、何かを考え歩き出していくのである。

 

「こちらこそだよ。リュートがいるから、あたし頑張れてるし」

 

それは龍斗も、月愛も例外ではない。有名私立大学に進学し、バイトに勉強に、と大忙しながらもモラトリアムを過ごす龍斗。アパレルショップに就職しあっという間に頭角を現していく月愛。大学生と社会人、そう簡単にお互いのリズムは合うものでもないけれど、それでも絆を温める二人。

 

「戻りたいな・・・・・・高校の頃に」

 

けれど、周りはそうもいってはいられない。周りの恋路は、それぞれの展開を迎えていく。月日の中でそれぞれ迷い、思い悩んで。戻れないあの頃を懐古しながら。

 

龍斗にバイトを紹介した海愛は、いい男を探して迷い。

 

祐輔の事を思うも手ひどく振ってしまったという悔恨に揺れる朱璃は夢に破れ、汚れっちまい。それでも祐輔への想いを捨てきれず、道を踏み外しかけた彼を押し倒し。

 

やっとこさ医大に合格するも、まさかの北海道の医大に合格した柊吾。彼に根気強く付き合い続けた笑琉は、今さら選べない道に別れを告げ、その恋は終わりを告げてしまう。

 

それぞれの恋が咲いて散る中。福岡への転勤話が来ている月愛にどう向き合うべきか、と悩み。それでもどんな彼女でも、それこそ何処にいても愛していくと決意する龍斗は結婚したいと言う思いを届ける。

 

「あたし、これからもリュートの傍にいるから」

 

その思いへ、月愛も思いを返し。新しく生まれた双子である妹達との世話の中、新たに出来た自分の夢を語る。自分なりに向いていると思って飛び込んだ世界で見た現実、そこから見つけた本当の夢を。

 

・・・さて、ここまでちょっといい話的に書いてきた訳だが、何と龍斗と月愛はまだ、最後の一線を踏み越えられていない。それは今巻でも。童貞にはドラマがあると言うけれど、中々に彼等はもどかしい。大人になりゆく中であっても。

 

三年後の世界という舞台を整え、ほんのり感動させていく今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

経験済みなキミと、 経験ゼロなオレが、 お付き合いする話。その6 (ファンタジア文庫) | 長岡 マキ子, magako |本 | 通販 | Amazon