読書感想:弥生ちゃんは秘密を隠せない3

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:弥生ちゃんは秘密を隠せない2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、秘密にしたくないからこそ、きちんと向き合いたいからこそ、明かした秘密、という所までいったのは前巻まで読まれている読者様であればご存じであろう。皐月と弥生、告白した秘密は恋の時間の歯車を容赦なく動かしてしまった。その歯車を止めることは出来るのか、は無論できるわけがない。だからこそ最後、どこに辿り着くにしても走り出すしかないのである。

 

 

「こうなることは覚悟の上だったんでしょ? それともただの見切り発車だったの?」

 

秘密を明かした事ですれ違ってしまった事を嘆くも行動できぬ皐月に発破をかけるのは、留学から帰国してきたある意味因縁の相手である真夜。彼女の年上らしい包容力からきたアドバイスに、皐月は自分のやるべき事を見定める。

 

「終わりたくないよ・・・・・・」

 

その裏、弥生もまた恋を終わらせたくないと涙と共に決意し。自分の恋を守る為、彼とまた向き合う事を選ぶ。

 

向き合ったのならあっという間、何せ離れていても抱えていた思いは変わらなかったから。秘密を隠していた事をお互いに謝罪し、元通りになる中。弥生の母親に家に来るように誘われ。暫し歓談の時を過ごすも、母親から真夜の事をサイコメトリーで調べてくれないか、と依頼を持ち掛けられる。

 

「未来の可能性って、自分で作っていくものですから」

 

 それはエージェントとしての働き、そこから来る知らぬと言う事への思い。だが皐月は全てを知る事が出来るからこそ、その依頼を一蹴する。もうこの力は必要ない、と言わんばかりに使わぬと言う決意を告げる。

 

そう、未来の可能性は無限大、過去を積み重ね、現在から繋いで未来へ向かうもの。その未来に、特別な力は必要ない。そして未来を求めるのに、特別な力も立場もいらない。

 

サイコメトラーとエージェントとしてではなく、只の二人として。約束の場である合唱コンクールのピアノ演奏の時間が進む中、合宿を行い絆を深めたりして。そんな中、取り戻した絆が描き出す彩を見、卯月は恋を弥生に託し舞台から降り。真夜もまた、弥生を見定め彼の事をお願いし、彼女の背中を押していく。

 

絆は取り戻した、ならばもう、何も怖くない。迎える本番、立ちすくむ足もトラウマも二人の絆で乗り越えて。

 

「俺もまだ言い足りないよ。これからもずっと、好きって言うよ」

 

そして、やっと辿り着いた始まりの場所。改めて告白を交わし、当然の中で結ばれて。二人、つないだ手と共に無限の未来へ歩き出していくのだ。

 

繋いだ手の中、秘密はいらぬ。そんなものよりも大切な人が隣にいるなら。

 

シリーズファンの皆様は是非。最後まで満足できるはずである。

 

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