
さて、時に画面の前の読者の皆様にお聞きしてみんとするのだが。皆様はもし、目の前で命の危機を迎えている人がいる、として自然に何も考えず助けに入る事が出来る方であろうか。己の危機も危険も顧みず、そういった事が出来る人と言うのは、やはり主人公の素質があると言えるのかもしれない。といった意味では、この作品の主人公である修二(表紙中央)は、主人公であるべき人間なのだろう。
両親の死により天涯孤独、バイトしながら勉強する苦学生の彼。ある日、彼は、バイト帰りにナンパから助けて以降、何故か構ってくるお嬢様、らしき少女、柚葉との帰宅中に突っ込んできた暴走車両から彼女を庇い事故に遭い、その意識は途絶えてしまう。
「・・・・・・導き手の召喚に成功したわ」
が、しかし。次の瞬間目覚めた時には、彼は異世界にいた。つまりは異世界召喚。召喚した異世界の教皇様曰く、修二は魂だけの状態で「勇者の導き手」としてこの世界に呼ばれており。何でも「魔界の扉」なる、魔族の世界へと繋がる扉を破壊に向かう勇者たちを、帰還と一つの願いの成就を対価に導いてほしいとの事。それを承諾し、修二はエルフの王女様、レティシア(表紙右上)、ドラゴニュートの王女様、リアンナ(表紙右下)、サイボーグ族の王女様、フェリス(表紙左)と共に旅立つことに。
「シュウジ・・・・・・」
「これで、フェリスだけのシュウジ様」
「回数は、勝った?」
旅の中、まずは力を得るためにそれぞれの国の、試練がある祠へ。そこで見ていく事になるのは三人それぞれの弱さ、心の傷、脆い部分。そういった所を見て、導き手として共に歩まんと。時に傷つくことを厭わず関わってくる修二に、三人の中、激重な感情が育ち始めるのは当然、の事であったのだろう。
そうとは知らず、修二の心の中、旅の中で深まる違和感。何か雰囲気がおかしい、何かが気にかかる。魔界の門に近づく中、明かされるのは魔界の門に挑んで帰ってきた勇者はいない、という事。旅の中育まれてきた絆、それが齎す激憤のままに魔界の門へ行ってみれば、現れたのは魔王を名乗る魔族。明かしてきたのは、魔族と言う上位存在に全ては仕組まれていたという事。 勇者、と言う名の生贄の連鎖を断つべく、導き手としての力を使い挑みかかり。三人も合流し戦闘へ。
「お前たちを守るのが、俺の役目だからな」
死力を尽くし、最後は修二が命を振り絞って。魔王の討伐、門の崩壊と共に修二は現実世界へ帰還、その中には勇者たちの力が。 そして、修二に置いて行かれて病み始めていた三人は、修二により力が使われた事で彼の生存を感じ、教皇様により一時的に再会を果たし。
「俺も―――こっちで頑張らないとな」
「え? ずっとだよ?」
しかし、修二に重い思いまでは届けることは能わず。修二は、重い思いをぶつけだす柚葉のいる日常に戻っていくのである。
重い思いを抱く少女達に溺愛される、割とさくさく読めるラブコメが見所でもあるこの作品。重いヒロインが好きな方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
Amazon.co.jp: 美少女勇者たちを命がけで守ったら、過保護すぎるハーレムができてしまった。 (ファンタジア文庫) : 木嶋 隆太, マッパニナッタ: 本