読書感想:魔王は勇者の可愛い嫁 ~パーティの美少女4人から裏切られた勇者、魔王と幸せに暮らします。4人が勇者殺しの大罪人として世界中から非難されてる?まあ因果応報かなぁ~

 

 さて、魔王と勇者が結ばれる、といういわばロミオとジュリエットのような恋のお話が割とすんなり通っているのは、それがラノベにおける一つのテンプレであるからだろう、という事で。実際、魔王が純粋に敵であったとしても、実際には抱えているものがあったりするかもしれないので。言葉が通じたりする以上、敵対しなくてもいい道もあったり、するのかもしれない。

 

 

そんな訳でこの作品は、敵対する相手同士であった勇者、シオン(表紙左)と魔王、ヴィラ(表紙右)がひょんな事から敵対を止め。お互いを知って結ばれていくお話なのである。

 

勇者と魔王率いる魔族が戦うとある異世界、かの世界で遂に巻き起こった最終決戦。聖騎士のティアナ、大聖女のカトレア、弓聖のイングリット、極魔導師のユーフェミアたち仲間達と共にヴィラを追い詰めるも、あまりにも彼女を傷めつけ過ぎる仲間達に、苦い思いが湧いた途端。シオンは戦いの仕上げとして、勇者の命を使った禁断の術式により自爆させられかけ。死にたくないと聖剣を振り回したら、偶々空間を切り裂き、魔界へ転移し。ヴィラによって命を助けられる。

 

「だけど、実態は少し違うんだ」

 

命は助かり、しかし聖剣は呼んでも来ない。身体が三割くらい魔族になって、力も強くなり。そんな彼はヴィラにより、悪の化身だと思い込んでいた魔族の本質を知らされる。悪の化身のイメージそのままの「絶対悪」、と呼ばれる陣営のほかにもただ平穏を望む、ヴィラたち「穏健派」もいるという事。絶対悪対人間、だけではなく絶対悪対穏健派、人間対穏健派、という三つ巴の状態になっていて。ヴィラは穏健派だけでも止めようとしているけれど、止めきれず絶対悪陣営からも謀反を起こされていると言う事。

 

「ヴィラのために、剣を振るう」

 

自身の頼りなさに心を揺らすヴィラ。彼女の為に、剣をとシオンは決め。その心意気は変わっていなかったと聖剣は力を貸し、新たな形態を解放し。シオンはヴィラの側近、「暗黒騎士」として反乱の鎮圧に尽力し。魔族内で信奉を集めていく。

 

対し、追い込まれていくかつての仲間達。シオンを殺した、という事実を隠すために真実に感づきつつあった王女様を手にかけ。戻れぬ路へ踏み込んでいく中、「絶対悪」の実力者、「暴風王」の甘い囁きに囚われ、堕ちていく。

 

「じゃあ、一緒に帰ろうか」

 

「ん。私たちの家に」

 

そうとは気づく訳もなく、魔界の政情を安定させるためにヴィラと政略結婚、既に思い合っているからこそこそばゆい甘さ溢れる日々を過ごす中、起きる波乱。魔王城の地下、宝物庫より国を幾つか滅ぼせる「呪詛兵器」が盗まれ、二十四時間後に起動する状態になってしまい。ヴィラは魔王として、人間の死を見逃す事を決め。それに反発したシオンは魔界を抜け、呪詛兵器を止めようとし。そこに現れた仲間達をもう一度信じようとするも、敢え無くまた裏切られる。

 

「俺も、君を信じる」

 

だけど、今は彼は一人じゃない。魔族オールスターズとも言える面々を連れてヴィラが救援にやってきて。全員の力を合わせて呪詛兵器を切り捨て、もう一度封印する。

 

「もう二度と―――お前たちに彼を傷つけさせない」

 

かつての仲間達は罪を暴かれ、裁きの場へ。それを、生き返った王女から聞いたヴィラは一人、暗い瞳で安心する。 だけどまだ魔界は平和ではなく、人間と魔族の争いもまだ終わってはいない。だからまだ、ここからなのだ。

 

割と真っ直ぐ目なこそばゆいラブコメがあり、ファンタジーとしての熱さもあるこの作品。ラブコメもファンタジーも楽しみたい読者様は是非。 きっと貴方も満足できるはずである。

 

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