読書感想:週末同じテント、先輩が近すぎて今夜も寝れない。

 

 窓を開けたら、今日も昼下がりの雲は、何処にいたって気持ち次第で、Can’t stop my days。 ここまでの文章を見てとある共通点を見つけ出される読者様はどれだけおられるだろうか。答えは一つ、全て社会現象となったきらら原作アニメ、「ゆるキャン△」の主題歌の歌いだしである。というネタはともかく、画面の前の読者の皆様はキャンプというものをされた事はあるであろうか。もししたことのないという読者様は、例えばゆるキャン△を見て、キャンプに憧れを抱かれた事はあられるであろうか。

 

 

その答えは千差万別として、この作品の主人公である高校一年生の少年、香月にとってはキャンプとは苦痛でしかなかった。それは彼が根っからのインドア気質であり、それもあり東京から北海道に引っ越してきて初めての家族キャンプも、彼は楽しめていなかった。

 

「そう。貴方、どうしてそんなにつまらなさそうな顔をしているの?」

 

 だが彼に声を掛けてくる少女が一人。偶々近くでソロキャンをしていた二個上の先輩、文香(表紙)。周囲から「オオカミ先輩」と言われるほどに孤高の存在である彼女と初対面から馬が合わず、だが彼女の言葉は何故か心に残り。初対面からいきなり黒歴史、となる筈だった。

 

「ね。お礼と言ってはあれなんだけど、貴方の週末、私がもらっていいかしら?」

 

が、しかし。彼女の言葉に気になることがありアウトドア関連についての本を気が付いたら乱読し。日課である図書委員の仕事で私情を通して彼女の要望を叶えた事で。そのお礼とばかりに香月はdayキャンプへと連れ出される。

 

文字通りやってみなければわからない。始めてみなければ伝わらぬ。彼女とタンデムで飛び出し、様々なスポットを巡って、二人で焚火を眺めて。幾多の初めてを経験する内に、彼の心の中にキャンプというものへの炎が芽生えていく。

 

だが、約束したキャンプがインフルエンザへの罹患で流れてしまい。香月をキャンプに誘う事で新たな楽しみを見出していた文香の心は折れてしまい、一方的に突き放されそうになって。

 

「お前と四海道先輩は何も始めてないだろ?」

 

その様子に心揺らす姿を心配した先輩に強制的に悩みを聞きだされ。背を押され、自分のやりたい事に気付いた彼は文香の師匠である飛鳥の手を借り、文香の元へと駆け出していく。

 

「俺は先輩とキャンプしたいんです。今度は、俺がエスコートしてみせます」

 

 たった一度、何でもない関係でキャンプしただけ。だがそれでも、もう面白さを知ってしまった。だから今度は自分から、勇気を出して。願いを口に、思いを胸に。今度は自分が、と香月は文香の手を引きキャンプへと連れ出していくのである。

 

準備から料理まで、様々なキャンプの要素。そして初めての経験というものへの煌めき。それが存分に出されているこの作品。だからこそ、普遍的な作品とは何味も違う面白さがあると言えよう。

 

初めての輝きに触れてみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

週末同じテント、先輩が近すぎて今夜も寝れない。 (GA文庫) | 蒼機純, おやずり |本 | 通販 | Amazon