読書感想:女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話6

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話5 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で鞠佳は絢の為に自分を隠していた殻を脱ぎ捨て、絢と付き合っていると言う同性愛の事実をカミングアウトしたわけであるが、それは一体何を巻き起こすと思われるだろうか。それは勿論、波乱と不穏である。それもまた仕方のない事であるのかもしれない。いくら女の園と言っても、同性愛というものは中々に見ない異端分子。ならば中々受け入れられぬとしても仕方のない事であろう。

 

 

「そんなに、感激しちゃった感じ?」

 

「うん」

 

鞠佳の告白に感動した絢ともっと距離が縮まり。教室においては否定の赤と肯定の青が交じり合う中、先輩として後輩の想いに助言した事で、教室は何でもない事のように、肯定の青に染まろうとしていた。

 

「―――ていうか、なんかいい話風にまとめているけど、ぜんっぜん意味わかんないなー」

 

 しかし、油断も平穏も簡単には許されなかった。クラスで鞠佳と発言権を二分する玲奈の予想外の言葉に、クラスはまるでオセロの駒が裏返るかのようにあっという間に赤に染まり。憤りと困惑と共に呼び出した鞠佳へ、玲奈は味方になる条件として、無理難題を押し付けてくる。

 

それはあと四日ほどの間に、玲奈が認めている五人の生徒の水着写真を撮影してくると言うもの。普段の鞠佳であれば、そのコミュニケーション能力で余裕であっただろう、だが今はカミングアウトの影響でそれが中々に難しい。しかし一度買った喧嘩は返品不可能。故にちょっとの間絢と離ればなれになり、態度の変わった彼女の内心に気付かぬままに、鞠佳は必死に奔走する事となる。

 

奔走する中で分かる、自分の周りの友人達の思い。今芽生えたばかりの想いに揺れている人もいれば、纏まろうとしている者もいる。古典的な嫌がらせを受けたりしながらも、写真を撮らせてもらう約束を何とか取り付けながら。その中で鞠佳は玲奈の本心へと近づいていく。周りに合わせて語りながらも実は腹に一物抱えている彼女が認めている者、其れは一体誰なのか。

 

「空気なんかじゃなくて、これからはあたしが、あたしの世界を作っていくんだ」

 

 肝心なのは「認めている」という事の本質。そこに秘められている本心、試すような彼女の心へ鞠佳はこれだという正解を叩きつける。認められるために、乗り越えるために。必死になって考えたその答えは、玲奈にも予想外の五人目の選択肢。

 

無論、対決が終わってもいい事ばかりではない。小さな嫌がらせを仕掛けていた犯人と対峙し、自分のもしもの可能性を目にし。交わらぬ喪失を経て、絢との日常へ戻っていく。

 

だが彼女はまだ知らぬ、絢が何を抱えているのかという事を。まだ底知れぬ闇があるという事を。

 

そこに触れていく今後、一体何が見えてくるのか。怖いけれど期待したい。

 

女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話6 (GA文庫) | みかみてれん, 緜 |本 | 通販 | Amazon