読書感想:わたし以外とのラブコメは許さないんだからね (6)

 

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読書感想:わたし以外とのラブコメは許さないんだからね (5) - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、「アフターストーリー」、エピローグの後のラブコメを描いてきたこの作品も、いよいよこの巻で最終巻を迎える訳であるが、最後は何を描くのか。それは恋人という関係をこれからも続けていくのならば、避けられぬもの。即ち親との対決である。

 

 

「希墨、積極的すぎ」

 

「ヨルカだって」

 

文化祭のステージで堂々と公開プロポーズをぶちかました事で学内の公認カップルとなった後、更に糖度を深めて過ごす聖夜のデート。だが、希墨は内心穏やかではいられなかった。何故ならばヨルカから両親からアメリカへの移住を提案されたと明かされたからである。

 

「わたしと希墨を引き裂こうなんて提案、絶対に認めるわけないでしょう」

 

無論、それを受け入れるヨルカではなく。今まで離れて暮らすのが当たり前だったのに何を今さら、と初めて父親と喧嘩し縁切りまで宣言したと明かし。その様子にそれ以上踏み込む事も出来ず、再び日常へと戻っていく。

 

瀬名会の皆も含めてクリスマス会をしたり、慌ただしい年の瀬を迎えたり。徐々に日々が積み重なる中、何も動きがなく何も出来ぬ事に焦燥感を抱え始める希墨。

 

「自分にとっての当たり前が、実は最大の武器であることにもっと自信を持ちなさい」

 

その背に届く、恩師である紫鶴の言葉。ヨルカ不在の初詣の中、届くのはヨルカからの交渉決裂の報告。

 

「俺が好きでやっていることさ」

 

 ・・・今までなら動かなかったであろう。信じて待っていたであろう。だが今、それでいいわけがない。二人で乗り越えねばならぬ問題があり、遠く離れた伊豆で泣く恋人がいる。ならばやることは一つ。 完璧でなくとも最高の最善をつくせ。アメリカじゃないならゼロ距離だ。仲間達に背を押され、希墨は心のままにヨルカの元へと駆けつける。

 

諸悪の根源であるはずの父親と相対して分かる、彼の本心。親として娘を思うからこそ、大人として何の責任も取れぬ子供の事を憂うからこそ。そこにあるのは不器用な、けれど確かな愛。やるべきことは見えた、決まった。叩き伏せるのではなく分かり合う、自分達に賭けさせる。

 

「―――有坂ヨルカの笑顔を取り戻しました」

 

武器となるのは、希墨の実績。誰にもできなかった、繋ぐ役目の彼だからこそ出来た、真似出来ぬもの。

 

「だけどね、もうわたしにとって一番帰りたいのは希墨のいる場所なの」

 

そして鍵となるのはヨルカの思い。 そこに込めるのは感謝と卒業。もう大丈夫、彼と一緒ならと。呪いでお互いを縛るのではなく、祝福でお互いを繋ぐのだと。

 

その思いを繋げて届かせ、未来に約束を預けて。

 

「希墨の行動が、こんな風に未来まで繋がっていくなんて感動するね」

 

そして、約束の未来で。預けていた約束を果たし、新しい人生を歩き出し。希墨やヨルカ、かつての子供達がオトナになりそれぞれの道を歩き出す中。彼等が繋いだ想いは、縁は巡り巡って、繋がり続けて。また誰かを結ぶ絆になっていくのである。

 

巡り巡って、廻り廻って。辿り着くのは完全無欠の大団円。いざ、その最後までご覧あれ。

 

最後まで貴方も満足できるはずである。

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