読書感想:高嶺の花には逆らえない2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:高嶺の花には逆らえない - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、付き合っている筈の新をこれでもかと、まるで豚か何かのように嫌悪し、葉にはまだ隠しているけれども、これでもかと彼の事を溺愛している、この作品のヒロインであるあいり、であるが前巻を読まれた読者様は彼女が一体何を秘めているのか、気になられてはいないだろうか。そしてここで、私は一つ、それのヒントになり得る情報を開示させていただく。それは彼女の「名前」である。何故葉や新、千鶴は漢字の名前があるのに、彼女だけひらがななのか? そこにこそ、過去の一端が隠れているのが分かるのが今巻なのである。

 

 

「ならバイトでもしたらどうだ? あんま金ねぇだろ?」

 

迎える夏休み、新からの宣戦布告とあいりの態度に葉が悩む中。彼女をデートに誘う為、文也の提案でバイトをする事になり。条件が唯一あうファミレスに面接に行ったら、セクハラクソ野郎系店長ににべもなく追い返されてしまう。

 

「うん、葉くん。すごく似合ってるよ」

 

 が、しかし。後日舞い込んだ採用通知に出向いてみれば待っていたのは懲戒解雇された店長に代わる新たな店長と、先にバイトとして入っていたあいりの姿。新への餌代を稼ぐため、先にバイトとして入っていたあいりが手を回し、無事に採用となったのである。

 

「なんの授業か知らないけど、エッチな授業はダメだからね?」

 

仕事を覚える為に必死で頑張りながら、先輩である美鈴に女心を学ぶ葉にあいりが嫉妬する様子を見せたりと、穏やかに、そしてほのぼのと進むバイトの時間。その裏、あいりがバイトしていると知った新は同じバイト先に応募するも、一昔前に流行ったSNSで自らの悪行を赤裸々に語っていた偽アカウントの存在により落とされ。焦燥感の裏、心の余裕を無くしていく。

 

「想いって言うのはね? ずっと同じじゃないんだよ?」

 

更にその裏、ダイエットに励みながらも葉とあいりの関係の中に入り込めぬと落ち込む千鶴は、美紀の優しい言葉に自信を取り戻し、懸命にダイエットに励む。

 

夏休みはめくるめく、遂に訪れる勝負の時、夏祭り。懸命に乙女心を察してあいりを連れ出し、決定的な言葉を投げかけようとした途端。横やりを入れてきた新の言葉をあいりは肯定してしまい、葉の勝負は最低の苦い記憶へ変わる・・・

 

「佐原くんのそういうところが・・・・・・私は大好きです」

 

「―――はい、千鶴です」

 

・・・筈だった。だがそこへ現れたのは、大胆なイメチェンを果たした千鶴。優しさで無自覚に新の心を傷つけ落ち込む葉を柔らかく受け止め、三つの願い事を口にして。彼女の優しさは葉の中、忘れられぬ思いを刻む。

 

「名前すらも覚えてないんだね」

 

―――その裏、あいりが新に告げていたのは過去の真実。新の過去の悪行の被害者が彼女であったと言う事実を告げて背筋を凍らせ、悪魔の三文字を彼へと贈る。その三文字とは何か。その三文字は葉の知らぬ所で何を生んでいるのか。

 

千鶴が遅れた分を取り戻すように猛チャージをかける裏、あいりが新に一撃入れる今巻。

 

女の子とは斯くも可憐で健気で、同時に恐ろしい。深まる混沌と人間関係は何処へ向かうのか。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

高嶺の花には逆らえない (2) (ガガガ文庫 ガと 5-2) | 冬条 一, ここあ |本 | 通販 | Amazon