前巻感想はこちら↓
読書感想:虚ろなるレガリア5 天が破れ落ちゆくとき - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻で八尋と彩葉の戦いも一段落、前巻まで読まれている読者様がこの巻の感想を開いていると言う仮定の元にここからの感想を書いていく訳であるが。この世界は世界龍が見ている夢、死者の国である冥界であり。八尋と彩葉は次なる世界龍になる権利を手に入れ、しかし新世界を作ることを選ばなかった、というのはご存じであろう。では、前巻エピローグまでの空白三年間、その後に何が起きたのか。少しだけ触れる後日譚が今巻なのである。
「わたしたちが、あの子たちに会うわけにはいかないからね」
前巻の騒動、世界龍殺しからしばらく後。本当は冥界の外、幽世で暮らしている筈、しかしある意味イレギュラーな形で世界龍になってしまった八尋と彩葉。世界龍の権能はばっちり持っているので不老不死な彼等は、絶海の孤島にて絶賛引きこもり生活をしていた。
そんな彼等の元、空から落ちてきた謎の少女、エリ。八尋の事を知っていて、何故か彩葉の事を警戒している彼女。一先ず彼女を保護する事になる。
そんな事態の裏側、世界は動き出していた。ジュリのお願いにより、蓮と凛花が向かったメキシコの遺跡。魍獣らしき獣の目撃情報があったそこで出たのは、魍獣ではない未確認の獣。更に、結婚し出産のために戻ってきた善と澄華の武器を狙う賊。更には日本に残っていた絢穂を狙い連れ去る民間軍事会社、キュオス。その先兵であったのは、八尋によく似た謎の少年、シグレ。
絢穂の拉致という話を聞き、八尋と彩葉も日本に向かう事となり、善と澄華とも合流し。更に、キュオスの施設から脱走してきたシグレと絢穂とも再会するも。それこそが事態の裏の黒幕、その狙い。現れるようになった未知の怪物の正体、それは「無名天使」という天使の使い魔。つまりは冥界ではない別の世界からの侵攻だったのだ。その狙いは無論、八尋と彩葉の力。暴走を始めたシグレにより龍因子が奪われ、いきなり絶体絶命の危機に陥ってしまう。
「私はあなたが嫌いだから、あまり情けない姿を晒してると兄様を取り返しに行くって」
意識不明の八尋を精神世界で救うのは、遺されていた珠依の思い。彼女の願いを受け、地の竜の権能を発動させ。力を取り戻した八尋は、善と共に暴走するシグレへと立ち向かう。
その先に、始まるのは八尋達の暮らす島の開発計画。もう一度平和になった世界で、彼等の人間世界との繋がりを失わせないために。
「死が二人をわかつまで―――」
かくして、世界はまた、のんびりと歩き出す。世界が終わる時に彼等も死ぬ、それはきっとまだまだ先の話。 今日もまた、穏当に、緩やかに世界は変わりなく。
最期まで皆様も是非楽しんでみて欲しい。