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読書感想:花嫁を略奪された俺は、ただ平穏に暮らしたい。 - 読樹庵
さて、前巻を読まれた読者様は、一巻を読まれた後でカクヨム版を見に行ったという方もおられるかもしれない。先に言ってしまうとカクヨム版は一巻の範囲の後は数年後まで時間を飛ばしてエピローグ、となっている訳で。今巻からは書き下ろし、其処に至るまでの時間を埋めていく訳である。
では何を描いていくのか、という話であるが。新と寧々、二人の穏やかなのんびりとした日々を描いていく裏で、姫乃と湊、愚者二名が更に落ちていく、という訳である。
「新さん行ってきます。新しいお仕事頑張ってね」
未だ名前のない関係、それを続ける新と寧々。そして全てを失うも、逆に言えば新は親の軛から解き放たれ自由になった、という訳で。生活の為にも、自分の適性を探る為にも様々な仕事に手を出していくなり。一先ず寧々の通う高校で、数学の非常勤講師の職を得る。
「寧々、頑張るね」
びっくりするも、一先ず学校では根掘り葉掘り聞かれるのを避ける為、初対面、という事にし。 しかし若いイケメンである新は学校では注目を集め。それが少し面白くない寧々は、あらかじめ彼の事を話してあった親友、陽葵と美羽に唆され。もうあまり一緒に居れる時間は少ないから、と期間限定の間に攻めるべく、決意を固める。
既に夏休みが迫る中、体調を崩した保健室で接近してどきりとしたり。陽葵の友人であるオタク、拓も加えて美羽も交えて、房総半島の海へとお出かけしたり。
「勉強や仕事ばっかりしてたお前の青春はこれからなんだからな」
そう、これは正に遅れてきた青春、と言えるものなのかもしれない。当たり前に過ごしていたはず、しかし過ごせなかった時間。そんな時間を取り戻すかのように、子供達とわいわい騒いだり。更には夏休み、授業も無くて暇だから、と寧々のバイト先である喫茶店にバイトで入ることになったり。
様々な場所で重なる二人の時間。だけどそこに迫りくる愚者の影が一つ。
「帰れって言ってんだよ!」
それは姫乃。前巻の後、ボロアパートで湊と暮らし始めるも世間知らず過ぎて次々と仕事をクビになり、二人でリゾート地での住み込みバイトに行きついて。自分だけ根付く事に成功した湊から辟易して捨てられて、一人戻ってきて。今、少しずつ借金を重ねながら暮らし始めた彼女が寧々の現状を知り、脅す材料と好機を見出してくる。
言ってしまえば、まぁ事情を知らぬモノからみたら寧々の方が事情が微妙に見えても仕方ない。そこが弱みとなり、新の平穏を守る為寧々は屈しそうになり。
「その時点で俺は君を絶対に赦さない」
そこへ駆けつけたのは勿論新。自分に迷惑を掛けられる事はまだいい、しかし寧々に危害を加えるのは許さぬと怒りと共に言い放ち。接近禁止の念書、という成果を得て悪縁を断ち切るのである。
より愛が深まり甘さ増す今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
Amazon.co.jp: 花嫁を略奪された俺は、ただ平穏に暮らしたい。2 (角川スニーカー文庫) : 浜辺 ばとる, Kuro太: 本