読書感想:高嶺の花には逆らえない3

 

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読書感想:高嶺の花には逆らえない2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、今巻の表紙はダブルヒロインであるあいりと千鶴であるが、ラブコメにおけるダブルヒロイン、という事で画面の前の読者の皆様、何かお察しではないだろうか。そう、この作品は今巻で最終巻なのである。故に葉は、選ぶのである。彼の事を思ってくれる二つの愛から片方を。

 

 

「恋って・・・・・・なんでしょうか」

 

時を戻そう、初めに語られるのはある二人の子供の軌跡。水が苦手な女の子が少年によって救われ、別れたくないと願いながらも別れざるを得なかった少年が約束の末に離れ、少女が決意するまでのお話。

 

その振り返りの後、場面は移り変わり新学期。夏祭りの後、あいりが新に投げかけていた言葉を知らず、あいりに会えなかった新が目撃するのは、醜くなった新。彼の事を心配するも拒絶の言葉を投げかけられ。恋に悩む葉は、あいりの家を訪ねる事となる。

 

それは彼にとっては思わぬ所、初恋の相手の家。だが今はそこに住んでいるあいりは、意外と元気そうな様子を見せるもその子の事は知らないと言い張り。一先ず日常に戻る中、新はあいりにフラれた事で痩せる事を決意し。葉の家のジムを久々に訪れ、またあの日のように筋トレに励んでいく。

 

そんな中、文化祭を一緒に回る約束をした千鶴が熱でダウンしてしまい、どうすればいいのかと悩む葉は新のアドバイスで思いっきり文化祭を楽しむことに決め。結果的に、あいりと一緒に回る事となる中で、ふとした切っ掛けで思い出の中のあの子とあいりの面影が重なっていく。

 

「私はね・・・・・・立花あいりだよ?」

 

自分は「立花あいり」、であると彼女は言う。葉の初恋の相手である「カッキー」ではないと否定する。しかし僅かなピースから今、頭の中で繋がった真実は絶対にそうだ、と叫んでいる。

 

 ・・・だがしかし、それは本当に彼女であるのか? 確信したからこそ分かる。彼女の今の姿、それは自分が理想として語ったものであると。自分の知っている姿ではなく、自分の理想を叶えたその姿。自分はその理想に惚れこんでいた。だけど、千鶴に惹かれる心も確かにある。理想じゃない、けれど現実にそこに在る恋も今は知っている。

 

理想と現実、二つの恋。その狭間、美紀も含めて四人で出かけた遊園地であいりが仕掛けた最後の勝負。選んで欲しい、そう願われた葉は、自分にとっての特別を選ぶ。

 

「ただいま、葉ちゃん」

 

さて、「高嶺の花には逆らえない」。この作品を振り返ってみて思う、きっとこの作品は「手に入れる」までのお話であったのだろう。葉は自分にとっての本当の意味での特別を、新は素の自分でいられる相手を。そして彼女は、本当の自分と新たな夢を。そこにこそ「高嶺の花には逆らえない」、このタイトルの意味があるのかもしれない。

 

高嶺の花はもういない、けれどそれでいい。もう高嶺の花は要らないのだから。画面の前の読者の皆様も是非、最後まで見届けて欲しい次第である。