
前巻感想はこちら↓
さて、前巻で春人が二度目の死を迎え、陸久が部屋の中へと消え。小康状態で油断何ぞさせてやらん、と言わんばかりに牙を剥いてきた無名七不思議たち。ふとここで、このシリーズを読んできた読者様は思い出されないだろうか。そも、かかりに友好的な七不思議は本当にいたのか、という事を。啓達の代のかかりで起きた事を覚えておいでの方もおられるだろう。啓の仲間の心の隙間、もろい部分に侵入してきて引き込んできた無名七不思議がいたであろう。
思い出されたであろうか。それを念頭に華菜たちのかかりの面子をもう一度見てみよう。 ・・・・・・何かヤバそうなのが一人、もとい一体いないだろうか。第二部完結となる今巻は、そんな無名七不思議のより怖い部分が曝け出されていく巻なのだ。
「海深は絵が上手なんだから、もっと描けばいいじゃない、って思ってたのよ」
「生き残らないと、本当に全部消えてなくなるからな」
前巻の後、消えてしまった陸久の存在。あれだけ陸久の事を愛していた母親も、その存在を忘れていた。彼女の絵、という才能は海深のものとなっていた。返して、と叫べど帰らず。残る海深、華菜の二人は決意する。もっと七不思議をきちんと記録する、という事。
『メリーさんをしんじるな』
それぞれ挑む者達、華菜も勇気を出して赤いクレヨンの教室へ。するとそこは、バケモノばかり、ではなく怪現象はあるも別に普通の教室で。そこに置かれていた去年のしおり、そこに血で書かれていたのはメリーさんに関する警告文。
「これが、あの敷地に最初に建った小学校だ。建ったのは明治の頃」
どういう事か、恵里耶に問いかけようとするも彼女は来なくなり。そこへ啓と共にやってきた由加志が報告してくれたのは、あかね小学校の無明七不思議、そのルーツらしきもの。明治時代の旧校舎は建て替えられ、恵里耶が担当していたグラウンドは元々墓地。つまりあかね小学校の無名七不思議のルーツは、意外と深い。俄然メリーさんへの疑い膨らむ中、元かかりの二人にとっても妙な事態。砂の中から現れ、倒したら砂になった人体模型。どうも何かがおかしい。
「『メリーさん』が―――みんな殺してるの。人間も。化け物も」
立てられる推測、それは湧汰も恐らくもう、死んでいるという事。そこへ華菜に連絡をしてきた恵里耶。彼女が伝えたのは衝撃的な事実。前任者のかかりは卒業したわけじゃない、メリーさんの担当以外全員死んでる。それを為したのは、メリーさん。かかりの味方を装い、無名七不思議もかかりも食らって外に出ようとしていた、性格の悪すぎる最古参の無名七不思議。伝えた終わり、恵里耶は用済みと言わんばかりに砂に変えられ。由加志の調査で「ヒンナガミ」と呼ばれる憑きものの一種では、と推測が立てられたメリーさんとの決戦が幕を開ける。
本質に迫り暴き出した、ほうかごの本当の姿。だがそれはメリーさんの王国の中、その口の中に顔を突っ込むかのようなもの。鍵となるのは、あの「赤いクレヨンの部屋」。怪異、のように見えてこの部屋こそが本当のかかりの味方。時に生贄を要求はするけれど、怪異をすべて食べてしまう部屋。 意識を残したまま無名七不思議となり果てていた湧汰が必死の意識で、怪異と化した恵里耶とメリーさんを部屋へと連れて行って。子供の命がけの自己犠牲、献身で怪異を終わらせた。
『ごめんね
気づいちゃった
私
とっくに砂』
「『卒業』して、それでも『かかり』のこと憶えてたら、入れてやる」
けれど。全ては遅かった。既に死していた海深も、メリーさんが果てた事で存在を保てなくなったように、消えて。 一人生き残った華菜は、啓の深淵へと捕まり、自身も志願する。
けれど、嗚呼。これはまだ第二部、第三部があるらしい。つまりはまた、どこかで怪異が目を覚ますという事。地獄はまだ終わらぬ、という事だ。
第二部閉幕、より怪異の深淵性が描かれる今巻。シリーズファンの皆様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。