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読書感想:お見合いしたくなかったので、無理難題な条件をつけたら同級生が来た件について2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻まで読まれているであろう読者様はもうご理解いただけている頃であろう。主人公である由弦とヒロインである愛理沙の、両片思いで残るはあと一歩と半分を詰めるだけのじれったくてもどかしい関係は。政略結婚などと言う無粋な大人達の思惑は一切関係なく、二人で向き合う事で醸成された関係は。だからこそ、一種の安定性を得ていると言っても過言ではないかもしれぬ二人の関係。しかし、その関係が更に動いていくのが今巻なのである。
年末も年始も一緒に。もはや由弦の家が居場所であるとでも言わんばかりに、同じ時間を過ごす二人。初詣なんていう、ラブコメであれば定番系なイベントも、二人にとっては改めてお互いの願いを感じ取り確認するだけの場に過ぎず。
そんな日々の中、自身の思いに気付いてほしいと悶々とする愛理沙を余所に、理想の告白のタイミングを模索する由弦。その最中、愛理沙が風邪でダウンしたと言う連絡を受け、由弦は迷わず彼女の元へ駆けつける事を選ぶ。
いつもとは違い、自身の手料理を振る舞ったり、身体を清めたり、側にいたり。自然と由弦に一緒にいてほしいと愛理沙は願い、当然のように由弦はそれを承諾する。
「・・・・・・結婚しよう、愛理沙。絶対に君を幸せにする」
そう、最早二人の関係は絶対不変。二人の願いは同じであり、お互いの事しか見ていないのは最早、理。二人の関係は恋人同士の季節、由弦の選んだ「丁度いいタイミング」で、当然の、だがやっとかと言えるような結実を迎える。
「あなたがダメと言っても、私は絶対に、由弦さんと結婚します!!」
彼がくれた熱と、確かな愛の形に背を押され。愛理沙は恐怖を越え、自分の幸せを阻もうとする家族へ己の意思を叩きつけ。
「家を割らせてもらう」
そして由弦もまた、かつては見上げるばかりだった父親へと己の意思を見せつける。彼女との幸せを阻もうとするなら、家を真っ二つにするのも容赦はしない。敵に回したくなければ、家の傀儡として扱いたければ、愛理沙を家族として受け入れろと毅然と告げる。
「恋」は深まり「愛」となり。愛となった思いは何よりも強い力となり。今まで縛るばかりだった家へと、己が意思を叩きつける、背を押してくれる力となるのである。
前巻にも増して甘く熱く、もはや安心の域へと踏み込んだじれじれが心に優しい今巻。
シリーズファンの皆様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
お見合いしたくなかったので、無理難題な条件をつけたら同級生が来た件について3 (角川スニーカー文庫) | 桜木桜, clear |本 | 通販 | Amazon