読書感想:放課後の図書室でお淑やかな彼女の譲れないラブコメ3

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前巻感想はこちら↓

読書感想:放課後の図書室でお淑やかな彼女の譲れないラブコメ2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で主人公である静流とメインヒロインである泪華は、実質的に両片思いのような立ち位置になった、というのは画面の前の読者の皆様もご記憶ではないだろうか。だがしかし、両片思いと言っても、中々に心はままならぬ。それもまた、仕方のない事であるのかもしれない。心はある程度固まっていたとしても、お互いがいれば大丈夫だと安心していたとしても。明確な言葉になっている訳ではない以上、未だ形を持たぬ関係に不安を覚えてしまうのは、どうしようもない事なのである。

 

 

両片思いのような立ち位置になっても、基本的な日々は変わらずに。相も変わらず図書室を舞台に、紫苑に振り回されたり、奏多に見守られたり、泪華の対応をしたり。騒がしくも賑やかな日々を過ごす中、静流は奏多から、休日を共に過ごさないかという一種のデートのようなものに誘われる。

 

 無論、それを聞いて安心できる泪華ではなく。彼女の何処か不安げな表情を気にしながらも静流はデートへと向かい。そんな二人の後を紫苑と泪華が尾行したりして。自分とは違う二人の独特な関係に、泪華は二人の間の関係の事をもっと知りたいと願っていく。

 

思い切って奏多へと聞いた、静流とのなれそめ。その求めに応じ語られる、彼との過去。彼女が彼の事を気にかけ、ずっと側においておいた理由。

 

 その理由が、泪華へと問いかける。果たして貴方は本当に、静流の側にいるつもりはあるのか。彼の事を託すに相応しい貴方であるのか、と。

 

「お前がいらないのなら、静流は私がもらっていくわ」

 

「わたしは静流が好きなの! 誰にも取られたくないの!」

 

けれど、負けられない。この想いだけは、「譲れない」。考えすぎた末の馬鹿な事だとしても、泪華は毅然と自らの気持ちを話し。その言葉を聞き、奏多は何処か安心したように、肩の荷が下りたと言わんばかりに舞台を去る。

 

「瀧浪先輩、好きです。僕の彼女になってください」

 

「じゃあ、これからいやというほど振り回してあげるわ。後悔してももう遅いんだから」

 

そして、静流もまた、彼女達に見守られ背を押される中。己が気持ちの一歩を踏み出し、その宣戦布告を泪華も毅然と返し。二人のラブコメは幕を開けるのである。

 

「欠落」が埋まれば普通になる、と言うのなら。二人で二人の「欠落」を埋め合えば。きっと二人だけの「特別」になる筈である。

 

正にしっとりとした、ここにしかないラブコメで最後まで駆け抜ける今巻。

 

シリーズファンの皆様は、最後まで楽しんでほしい次第である。

 

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