前巻感想はこちら↓
読書感想:推しが俺を好きかもしれない - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻を読まれた読者様であればこの作品の主人公である光助とヒロインである憂花の面倒くささはもうお分かりであろう。お互いに一枚、それぞれ違うフィルターを通してお互いを見ているからこそ、中々に交わらぬ二人の思い。そんな二人へと何かしらの起爆剤を投げ込むのであれば、どんな存在が良いであろうか。
「私はあなたのことが好き・・・・・・だよ?」
そんな存在は、光助のすぐ側にいた。彼女の名は由女(表紙)。光助と同じ文芸部の部員でありながら、とある事情により幽霊部員であった少女である。相も変わらず憂花に振り回され、丁々発止のやり取りを繰り広げ。しかし急に持ち上がる、文芸部廃部の危機。早急に活動実績を作るべく、由女と共に小説コンクールを目指して執筆を始める光助。その早々、由女はなんと光助に、長い事秘めてきた思いを告白してくるのである。
面食らい、心揺らされ揺れ惑い。部室で二人、何とはなしに執筆に励んだり。オンラインゲームで二人でゲームをしたり。今まで離れていた距離を埋めるかのように、二人は急速に仲良くなっていく。
「どうしても、夜宮くんなんだよ」
「憂花ちゃんはそれでも、あんたがいいのよ」
思いを隠さず、光助へとぐいぐいとアプローチしていく由女。その様子を見て、心穏やかにいられる憂花でもなく。光助を急に呼び出したかと思えば、由女と付き合わないでくれと、まるで縋りつくかのように彼へと思いを吐露する。
自分との取引の材料であった音源すらも彼に渡し、花火大会へと彼を連れ出し。彼を大切にしたいと、何も持たずに彼と、そして由女と向かい合う。
「いつか絶対泣かすから」
「・・・・・・私の方こそ。いつか、花房さんを泣かせられるよう頑張る」
負けられない、負けたくない。この思いだけは譲れない。譲るつもりもない。だからこそ分かる、目の前にいるのがどれだけ凶悪な好敵手であるのか、という事くらい。突き付けられる宣戦布告、苛立ちと怒りと共に受け止めるその言葉。向き合いお互いを敵と認識し。憂花と由女の負けられぬ戦いが幕を開けていく。
その裏、光助もまた己の思いへと向き合い。彼もまた、憂花へと一歩を踏み出していく。例え甘々、毎日幸せになれるわけがないと分かってはいるけれど。それでも、きちんと関係を作りたいと向き合っていくのである。
本格的にラブコメが始まり、面倒くさい三人の思いがもつれ合う、一味も二味も違う面白さの始まる今巻。
前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。