読書感想:お見合いしたくなかったので、無理難題な条件をつけたら同級生が来た件について2

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前巻感想はこちら↓

読書感想:お見合いしたくなかったので、無理難題な条件をつけたら同級生が来た件について - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で物語の始まりとなったこの作品であるが、前巻から少し間が空いてしまったので、少しだけ前提条件の復習をする事にする。 男女ともに結婚可能な年齢が十五歳まで引き下げられた世界で始まる、上流階級のお坊ちゃんな少年、由弦と上流階級の家の一員でありながらその血を引かぬ、家庭環境に問題のある少女、愛理沙のラブコメである今作品。簡単に言ってしまえば今作品はこんな感じであるわけであるが、この作品におけるラブコメする上での壁となる点とは一体何になるのであろうか?

 

 

 

 その答えは、やはり政略結婚、そして上流階級という点に尽きるのではないだろうか。政略結婚、そこに絡むのは当人同士の愛以前に、両家の大人達による思惑であり。上流階級というものは得てして面倒な事情を抱えている事が多く、実際二人のラブコメを余所に水面下では大人達の、世俗を見てきたからゆえのちょっぴり黒い思惑が渦を巻いているのである。

 

 だがしかし、そんな事は当人同士には関係が無い。同じ時間を同じ場所で過ごすうち、二人の心の中は少しずつ変化していく。大人の思惑によるお見合いで始まった筈の偽装の関係は、偽装とは言い切れぬ想いを孕んでいくのである。

 

いつものように、由弦の家で愛理沙が手料理を振る舞ったり、二人でゲームで対決したり。何でもない時間を過ごす中、突然の降雨が愛理沙の帰宅の足を阻み、急遽始まったお泊り会。

 

「同じ部屋で寝てくれませんか・・・・・・?」

 

その最中、過去のトラウマを刺激され弱気な一面を見せる愛理沙が由弦に求めた同衾。改めて知る、クールなばかりだと思っていた彼女の心の傷と心の弱さ。

 

高瀬川さんは、雪城さんに相応しい男性だと思います」

 

更に託されたのは、愛理沙の家の近くに住む知人であり、彼女に淡い恋心を抱いていた少年、小林の思い。舞台の端役になるどころか舞台にも上れなかった、間男にもなれなかった半端者で正直者な少年の思い。

 

「・・・・・・決めたよ。俺は、必ず、どんな手を使っても、君を手に入れる」

 

 そして巡り来る季節の中、由弦の中に芽生えた一つの決意。必ずあなたを手に入れる、それは醜いエゴか、独占欲か。否、それは本当の恋心。今まさに二人の関係は、中途半端と言えど一歩踏み出した。お互いへ向け、一歩踏み出したのである。

 

その決意は真っ直ぐ熱く、だからこそ尊く。夏祭りや映画鑑賞と言った沢山のイベントが何処か甘く、温かく。

 

物語としての甘さと完成度が確かに一つ高まり、段階を上げていく今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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