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読書感想：『ずっと友達でいてね』と言っていた女友達が友達じゃなくなるまで - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻で既に甘いもエモいも通り越して「尊い」という感じの関係を形成していた優真とゆいの二人であるが、画面の前の読者の皆様は覚えておいでであろうか。変わりたいと願い、支えたいと願い。まるで芳醇なワインを熟成するかのように、少しずつ関係性を変化させ始めた二人であるが、今巻ではそんな二人にも変化が訪れる。それは何故か。それ即ち「高校入学」である。
新しい季節であり、出会いの季節でもある春。それは今まで引きこもり生活を続けてきたゆいにとっては辛いものがある季節。今までは感じる事もなかった、けれど今は優真がいる。だからこそ今、勇気を以て一歩を踏み出し、数年ぶりの学生生活へと飛び込んでいく。
不安に反し、期待に応え。引きこもりとなった事で一度関係がリセットされたからか、それとも高校生は受け入れる多様性があるからか。すんなりとゆいの自己紹介も済み、二人の周りに新たな人間関係が形成されていく。
ゆいにも親しく声をかけてくれた、優真の中学からの同級生である飛鳥と名護。優真とはまた違うオタク的な一面を持ちながらも同じ趣味である名護と意気投合し、オタク文化に疎い飛鳥を皆でオタクの沼に引きずり込んだり。
今までにはなかった、体験した事もない色鮮やかな日常。そんな日々を齎してくれた優真への感謝が沸き上がる中、心の中には変化を望む気持ちとこのままでいたいと思う気持ちが芽生えていく。
「これからもずっと、友達でいてね？」
「けれど好きなものから逃げるのだけはダメ。絶対に後悔するから」
今という時間が一番楽しいからこそ、この関係を失いたくないからこそ。己の恋を引っ込めようとし、「友達」という関係に逃げ。しかし、飛鳥とネネはその決断を暗に非難し、もしもの可能性を口にする。もしも優真が誰かほかの女の子に靡いてしまったのなら。ゆいが一番ではなくなってしまったのなら。 想像してしまい湧き上がるのは拒絶の思い。きっと笑ってはいられなくなると思う、容易に想像できてしまう自分の姿。
「ユーマのこと、好き・・・・・・。ずっと、ずっと一緒にいたい」
だからこそ、後悔なんてしたくない。現状維持なんて言う逃避に逃げたりしない。もうあの日のように逃げたくない。小さな勇気を以て、少しずつ優真へと手を伸ばすゆい。いじらしい彼女の行いは徐々に優真の意識を揺らし、彼の鋼の意思を揺らしていく。
正しくもどかしくいじらしく。三歩進んで二歩下がるような、こそばゆい恋路。背中を蹴り飛ばすのではなく、ただ見守りたくなる。そういった尊さ、今巻では更に熟成され濃厚になっていく面白さ。
だからこそ、無事に出せたら、なんて接続詞は出て欲しくない。私にとって、今ラブコメでお勧めの三作品をあげるなら、という前提であれば容易に入るこの作品、どうか画面の前の読者の皆様も是非に読んでみてほしい。
そして、皆様も心撃ち抜かれてほしい次第である。
『ずっと友達でいてね』と言っていた女友達が友達じゃなくなるまで2 (GA文庫) | 岩柄イズカ, maruma(まるま) |本 | 通販 | Amazon
