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読書感想:両親の借金を肩代わりしてもらう条件は日本一可愛い女子高生と一緒に暮らすことでした。2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、乗り越えるべきハードルをハードルの上をジェット戦闘機で飛び越えるような勢いで飛び越えてしまった後、歩くような速さで並んで、一歩ずつ着実に絆を深め、本物の夫婦のようになっていく主人公、勇也とヒロインである楓。・・・しかし画面の前の読者の皆様。貴方は何かワスレテハイナイダロウカ? 乗り越えるべきハードルは確かにある、それは事実である。しかし、それ以外に解決しなければいけない問題があるという事を、お忘れではないだろうか?
もう答えはお分かりの読者様も、答えが分からないという読者様も、答え合わせといこう。その答えは、哀である。勇也に元々片想いしていながらも楓に、鳶に油揚げを攫われる形となった彼女である。断ち切れぬ思いに悩む、彼女である。
その想いは、無論知られてはいない。口に出したわけでもない。仮にもし先んじる事が成功していても、勇也を救う事は出来なかったかもしれない。
だが、そうだとしても諦めきれる理屈はどこにある? ずっと二人の傍にいた、その心を明かす事も出来ずに。既に取り返す事は出来ないかもしれない。だが、この問題には、この心には。いつの日か、向き合わなければいけない時が来る。
進級した新たな季節。新しい学年では、皆で揃って同じクラス。更には後輩となった楓の知り合いの結も加え、更に賑やかになる勇也の周り。
だが、新しい季節も特に変わらず、それどころか更に愛を深めた楓は、勇也にさらに大胆にアプローチを決め、あっという間に新入生たちの目から光を失わさせる程に、その夫婦っぷりを見せつけていく。
「ほら・・・・・・聴いてください。私の心臓の音・・・・・すごいですよ?」
それは二人きりの愛の巣でも変わる事が無いばかりか、さらに大胆に。ある時は勇也のバスタイムに乱入し、一糸まとわぬ姿で抱き着いたり。
「お待たせしました、勇也君! これが今回のご褒美です!」
またある時は、期末試験を頑張った勇也へご褒美に、童貞を殺すセーターを着て迫ったり。
変わらぬどころか更に甘々、濃厚に。そんな裏で心を揺らす哀は、決意を固め踏み出さんとする。
「だから俺、入学する前から二階堂先輩が好きだったんです」
自分に告白してくれた後輩の言葉が引き金となり、決意を固め行動に移さんとし。
「は、話を聞いてほしいんだ。ずっと怖くて、心地好い関係を壊したくなくて立ち止まっていた女の子の話を」
「好きだよ、勇也。私は誰よりもキミのことが好き」
そして思い出の夏祭り、哀は一歩踏み出し決定的な変化の引金を引く。もう戻れない、例え終わるだけだとしてもという変化の引金を。
報われないことは決まっている筈、だけどこの心はいくらお金を積んだとしても、幾万もの言葉を重ねたとしても。終わらせられるのは、二人だけ。余人を交える事の出来ぬ、二人だけの問題。
水面に落ちる石を、落ちる前に受け止めることはできる。だが、落ちてしまったのなら波紋はもう止められぬ。
決定的な波乱が、我々の心に波紋を起こしてくる今巻。
果たして四巻ではどうなるのか。この行方が気になる次第である。
両親の借金を肩代わりしてもらう条件は日本一可愛い女子高生と一緒に暮らすことでした。3 (ファンタジア文庫) | 雨音 恵, kakao |本 | 通販 | Amazon