読書感想：ねぇ、もういっそつき合っちゃう？３　幼馴染の美少女に頼まれて、カモフラ彼氏はじめました

前巻感想はこちら↓

　さて、私は前巻の感想で今巻が凄い事になる筈であると予想した次第であるが、実際の所はどうなっているのか。先に答え合わせをしてしまうと、すぐにすごい事になるわけではない。だが、前巻で変化の引金は確かに引かれているために。一度自覚した思いが、更に止まらなくなっていくのが今巻なのである。

今まで偽装とは言え恋人ムーヴを各所で繰り広げていたことにより、十色に近づく影も徐々に鳴りを潜めていた。だがしかし、そんな平穏はまだこないとでも言う様に。十色の友人の一人である楓が、自分の想い人である駿がまだ二人の関係に懐疑的であるからばっさりと諦めさせて欲しいとお願いしてくる。

「―――これは・・・・・・本物の恋人ムーヴだよ」

　勿論十色を取られるのは嫌な為、まずは友人である三太を通して情報収集に挑むことになり。その引き換えに、彼の願いにより彼とまゆ子を結び付ける為にダブルデートに挑む中。十色は唐突に、打ち合わせなしの恋人ムーヴを正市に仕掛けてくる。

それはどこか試すかのように、確かめるかのように。何故確かめようとするのか、試そうとするのか。その理由を図り切れず正市は混乱し、十色もまた自分自身の思いに振り回されていく。

駿の思いの根底も図り切れぬ中、駿の思いの説明を受けた十色は今までの自分が出来なくなっていく。どこか歯車が狂っていく、それは何故か。それは彼にそこまで求めてはいけないと言う気持ちと、もっとと求める気持ちが二律背反を始めているから。

「わたしはね、正市がいいの。他の人じゃなくてね、正市がよくて、一緒にいるの」

　だからこそ正市の発言に温度差を感じ傷ついた心は彼を求める。そして隠せぬ本心は、彼の言葉に対する答えを自然に引き出していく、思い出の場でもある秋祭りの場で。駿がいいわけではなく、正市がいい。他の誰よりもあなたがいい。だからこそここにいるのだ、と。

引金は既に引かれ、あとは駆けだすばかり。そしてもう彼女は止まれない、止まるつもりもない。ついに自分の心の中にある気持ちを認めるに至って。膨れ上がる気持ちはどうしても抑えきれなくなっていく。

だからこそ決定的な変化までもう少し、あと一歩。もうちょっと刺激してしまえば、きっとその望む場所まで辿り着ける筈である。

果たしてその刺激となるのは誰か。

その時を楽しみに待ちたい次第である。