読書感想:終焉ノ花嫁3

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前巻感想はこちら↓

読書感想:終焉ノ花嫁2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

さて、この巻の感想を書き始める前に、私は皆様に残念なお知らせと一つ、お詫びをしたい。作者である綾里先生がtwitterで今巻が一時完結の最終巻である事を明言されているが、そのきっかけとなったのは恐らく私が綾里先生本人に聞いてしまった質問である。なのでこれからもこの作品は続くはずという希望を抱かれていた読者の皆様には伏してお詫びいたしたい。

 

では、最終巻となる今巻では一体何が描かれるのか。それは既にあらすじで描かれている通り、様々な秘密についての真実。

 

 そして、アサギリという一人の歪んだ愛に狂う少女が辿り着いてしまった最悪の結末、そしてその果てにコウが選んだ自身の選択である。

 

前巻でかつての学友であるイスミとアサギリと再会し、逢魔ヶ時を攻略し一時の平穏を取り戻したコウ。

 

「傀儡衆」にお茶会に招かれたり、時にアサギリに好意を抱くイスミに相談され戸惑ったり。平穏な日々は、取り戻した仲間と共に続いていた。

 

 だがしかし、平穏なんて長く続くわけもなかった。当然である、キヘイはまだまだ生きているのだから。

 

「私は、コウのことが好きです。カグロ・コウを愛しています」

 

唐突なアサギリの告白、それは無論断るしかなく。だが彼女は白姫の名を口にし、コウを拒絶し離れていく。彼女は決して知らぬ筈の白姫の名を。

 

拒絶と否定、更には自らの身体に訪れつつある稼働限界に揺れる間もなく、探索においてアサギリは行方知れずとなり。彼女を探し潜った迷宮の新たなる世界で、コウは仲間達と共に目にする。明らかに異常なキヘイの大繁殖、そして見た事もないキヘイの赤子を。

 

仲間達を庇い命の危機に陥るツバキ。そんな彼女を救ったのは、百鬼夜行の第三教師、クロネと彼女の花嫁である、治癒特化型の姫、翠姫。

 

 だが、新たな頼れる味方を得ても状況は尚悪く。帝国全土の遺跡で発生したキヘイの異常繁殖、それどころかコウ達の前には新たなるキヘイの王が現れる。

 

「人間も、果たして本当に味方と呼べるのかね?」

 

彼はキヘイの真実を語り、一つの真実をコウに告げる。アサギリは人間と共に立ち去った。似たような事案は少なくも確かに存在すると。

 

それは一体、どういう事なのか。アサギリの為、十数年単位の時間をかけ真実を探る事を選ぶコウ。だが彼女は待ってはくれなかった。再会は最悪の形で訪れてしまった。

 

「自分が特別じゃなかったから。永遠に手にできないものがあったから」

 

新たなる「姫」シリーズ、「黎明姫」、通称を「グラン・ギニョール」。コウの為に特別になる事を選んでしまった、壊れた彼女は炎の中でコウの前に立つ。

 

ならば、誰がそれを為したのか。帝都と学園、二つの場でそれぞれ行われていると言う人体実験。その学園側の主格は誰か。

 

それは、コウ達のすぐ近くに。けれど主格もまた、自分なりのやり方で人々を救おうとしていただけ。

 

 そんな風に歪めてしまったのは何か。それはこの国である。この帝国という国が語っていた全てが嘘で在り、コウ達の運命はとっくに国によってレールを敷かれてしまっていたのだ。

 

「悔いはあります。それでも、俺に掴めるものは僅かですから」

 

だからこそ、コウは選ぶ。少なくとも確かに大切な人達を守れる選択肢を。例え、共に戦ってきた仲間達と袂を分かつとしても。それでも、自分が大事だと思う人達との未来の為に。

 

戻れぬ旅へ踏み出す彼等の旅路はここから。進む先に何があるのか、それはまだ分からないけれど、それでも皆で共に。

 

陰惨な中に痛ましさと切なさ、そして独特の愛があるこのシリーズ。

 

綾里先生のファンの皆様、ちょっとグロめなファンタジーが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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