読書感想:呪剣の姫のオーバーキル ~とっくにライフは零なのに~4



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読書感想:呪剣の姫のオーバーキル ~とっくにライフは零なのに~3 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で「屍喰らい」強化の鍵となる素材、蟲王ナアスの殻を手に入れた我らが主人公、テアであるが、ここまでこればもうお分かりであろう、画面の前の読者の皆様も。この後の展開はどうなるのか。当然の事だが残すのはメッソルとの最終決戦のみ。つまりはそういう事であり、命が簡単に呆気なく散る、最後の戦いが描かれるのが今巻なのである。

 

 

手に入れた素材を早速「贄」として加工し。今や注目人物の一人であるテアを見に来たギャラリー達が音を上げる程に集中し、ようやく完成させた「贄」。それを早速、蛭型の強力な魔物相手に試し。何人もの体液を吸ってきた狂暴な魔物を、新たな「屍喰らい」はあっという間に肉塊へと変える。

 

そんな彼等にも日常は必要と言わんばかりに、エレミアの半ば強引な提案で彼女の弟妹達と遊ぶことになり。シェイが謎の面倒見の良さを発揮したりと、彼等には似つかわしくない程の一時を送る。

 

「惜しかったな」

 

 だがしかし、平穏は長くは続かなかった。平穏な日々の裏、引退しようとしていたホフマンは、メッソルによる魔物達のテストの為に屠られ。軍隊めいた秩序を以て襲来した魔物達と巻き起こる戦い。その中で強化された「屍喰らい」の力はあと一歩届かず、竜へと変じたメッソルにより「屍喰らい」は折られてしまう。

 

満身創痍のシェイ、新たな武器は思い浮かばぬテア。そんな彼を呼び出したメッソルは彼を認め、自身の目的を話すと共に助言を与える。彼等の町の地下に眠る「はじまりの神殿」、そこにお互いが望むものが眠っていると。

 

そこに至るには教会側の助力が必要。ラザルスが自身の心で手を貸し、はじまりの神殿へと潜入し。そこに隠されていた教会の恥部、マスターストーンに刻まれていた祈祷文を目にし。テアは知る。属性付与に隠された真実を。本当に祈っていた相手は誰であるのか、という事を。

 

「まだやることが残ってますから」

 

 掴んだ真実は炎となり、テアの胸の炉を燃やす。その炎が導くままに、遂に始まった最終決戦の中、全ての雑音を締め出して。侵入してきた魔物を何とか撃退し、傷ついた自分の血も使い、テアは一振りの剣を仕上げて見せる。絶対に神代の武器には届かぬと自覚してしまった、けれどそんな彼にしか打てない究極の一振りを。

 

一人では届かぬ、けれど二人ならば届く。一人じゃない、二人だからこそ戦える。

 

「悪くないね」

 

そして全てが終わった後、何も持たず自由となった二人は旅に出る。相棒同士である二人は、何処までも続く未来へと進んでいく。

 

最後まで熱く、真っ直ぐにスプラッタな中で駆け抜ける今巻。

 

どうか最後まで楽しんでほしい次第である。

 

呪剣の姫のオーバーキル: ~とっくにライフは零なのに~ (4) (ガガガ文庫 ガか 5-34) | 川岸 殴魚, so品 |本 | 通販 | Amazon