読書感想:終焉ノ花嫁2

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前巻感想はこちら↓

https://yuukimasiro.hatenablog.com/entry/2020/07/20/182506

 

生き延びた事を祝う祝祭、それはとても大切なもの。だがしかし忘れてはいけない。この作品の作者である綾里先生の描かれる祝祭が、只の祝祭で終わるわけなどない、と。

 

さて、前巻において一万と五千回の繰り返しを乗り越え千年黒姫を花嫁とし、全ての壊滅する厄災を乗り越えたコウ。

 

逢魔ヶ時を乗り越えた事を祝する祭りが開かれ、コウは二人の花嫁と共に祭りの中へと引き込まれる。百鬼夜行の名物出し物「存在しない筈のクラスの謎のお化け屋敷」の一員として。

 

だがしかし、その祝祭の前。帝都より帰還した百鬼夜行の二人目の教師、ヒビヤは告げる。お前の力をきちんと把握しろと。そして帝都より帰還した者達に気を付けろと。

 

帝都より帰還した者達、その名は「傀儡衆」。戦闘科最強の集団であり自らの身のみでキヘイの討伐を可能とする文字通り人外揃いの暗殺者達。

 

彼等は言う。逢魔ヶ時を乗り越えて「しまった」事で様々な情勢が変わり出したという事を。今の百鬼夜行からは人員を削ぐ必要がある。だからこそ貴様を殺すと。

 

その言葉の通り、コウは祝祭の場で何度も何度も殺される。

 

ある時は再会した友であるアサギリやイスミに。またある時は戦友である筈のヤグルマに。

 

そして彼が生き延びてしまった場合は百鬼夜行の面々へと手が及び、結果的に百鬼夜行は壊滅へと追い込まれる。

 

その異常事態を引き起こしていたのは誰か。その答えは既に表紙に。

 

画面の前の読者の皆様は表紙をご覧になった時に思われただろうか、彼女は誰かと。彼女は失われた五人目の姫、ロストナンバー・5.その名を―――「オープニング・セレモニー」。人もキヘイも全て狂わせ操る者。白姫の対極、戦争を始められる者。

 

「無論―――我ら【百鬼夜行】なれば」

 

繰り返しの先に全てを覆す為に駆け付けた始まりの日。未踏の深淵で彼女と出会い始まる、再び乗り越える為の戦い。

 

だが。だがこの戦いは哀しいものとなる。それは何故か。何故なら、キヘイの正体の一端の開示も絡む「彼女」の本当の想いが明かされてしまうから。

 

 

「どうして、どうして、どうして。私は愛されたかった。皆を愛していた。それだけで」

 

彼女は元は普通の女の子だった。誰かに愛されたいだけだった。彼女はただ、正義の味方になりたいだけだったのだ。

 

ならば、キヘイとは何だ? 逢魔ヶ時は何故起こされる? コウの行いの意味とは?

 

そして、コウへの歪んだ愛を抱えた「彼女」は一体どうなるのか。

 

前巻にも増して日常がわちゃわちゃしていたり、ヒカミとミレイのどこか甘い慕情らしき展開もあったり。だがしかし、この作品の本質は陰惨で陰鬱なダークファンタジーであると突き付けるかのように、救いようのなく後味の悪い、血にまみれた戦いが重く繰り広げられる今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様、やっぱりダークファンタジーが好きという読者様は是非。ここからが、地獄の本番である。

 

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