読書感想:底辺領主の勘違い英雄譚 2 ~平民に優しくしてたら、いつの間にか国と戦争になっていた件~

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前巻感想はこちら↓

読書感想:底辺領主の勘違い英雄譚1 ~平民に優しくしてたら、いつの間にか国と戦争になっていた件~ - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

さて、前巻の感想で私は生きて帰ってこれる保証はないが。という事を言ったが皆様覚えておいでであろうか。なぜこんな事を振り返ったのか。その答えは只一つ。それは今巻が前巻にも増してヤバく、更に生きて帰れる保証がないという次第だからである。

 

何処か某賢勇者に近いかもしれない、前巻の混沌。その混沌は弱まりもせず落ち着きもせず。一歩進むどころか、ロケットで飛び越えていくが如き所業である。

 

前回、王城に似せた漆黒の城を建城してしまったリゼ。彼は何の思いもなく、国王及び周辺貴族へ(失礼に過ぎる)正体の手紙を送り付ける。無論、周りの貴族は割と感性と考え方はまともであった。故に彼等は、身代わりとして自らや跡取りである長男坊を除く、力的にも立場的にも弱い次男坊、三男坊を送り込む。

 

が、しかし。それが間違いであった。それはリゼの浅慮を刺激するだけでしかなく、新たなる惨劇の幕開けであった。

 

巧みに貴族の子弟たちを扇動し、家や家族に対する不満や憎悪を吐き出させ掻き立て。更には元スネイルだった木から取れた樹液(龍の因子入り)を投与し、戦闘能力を強化し。

 

だがしかし、強化されてしまった子弟達により巻き起こされる惨劇も国王、ヤルダバートはどこ吹く風。それどころか狂喜乱舞して嬉々として、ベイバロン領への出兵を始める。

 

それもその筈。ヤルダバートに取ってリゼは百三十年の退屈な人生に彩を与えてくれた、初めての強敵である。リゼに負けず劣らずの狂人、それこそが彼だったのだ。

 

そんな二人が数百万もの人間を巻き込みながらぶつかり合えばどうなるか。もうお分かりであろう。そこに待つのは全世界を巻き込んだ惨劇。はた迷惑に過ぎる死闘だったのである。

 

地殻を直撃して全世界にM11以上の地震を巻き起こし、更にはヤルダバート、リゼ共に核の力を用いた攻撃を、互いに向かいこれでもかとぶち込んでいく。世界と惑星の汚染なぞ知った事かと言わんばかりに。

 

最悪である。

 

この巻の中で何度も言われている一言、ただこれにつきる。ヤルダバートが戦いの果て、うっかり女神ソフィア(表紙右)になってしまうのも、脈絡もなく銀河規模の攻撃をぶちかますのも。

 

あらゆる意味で最悪、誰も願っていない最悪の英雄譚。だがしかし、かの英雄譚は唐突に世界の歴史ごと消滅させられる。歴史の影より姿を現した魔王、アンゴルモアの手によって。

 

ではそれでリゼが止まるのか。否、そんな訳がない。かの世紀の大バカ者がそれくらいで止まるわけがない。

 

ここまで読んでいただけた画面の前の読者の皆様ならもうお分かりであろう。前巻にも増して今巻はヒドイ、正に混沌。ラノベの形をした冒涜的な何かと言っても過言ではない。

 

しかし、この無軌道で無修正な作品の中にも本能に突き刺してくるような面白さがあるのは確かである。

 

だからこそ、画面の前の読者の皆様も是非読んでみてほしい。狂気に飲み込まれて帰ってこれなくなっても責任はとれないが。

 

底辺領主の勘違い英雄譚 2 ~平民に優しくしてたら、いつの間にか国と戦争になっていた件~ (オーバーラップ文庫) | 馬路まんじ, ファルまろ |本 | 通販 | Amazon