読書感想:平民出身の帝国将官、無能な貴族上官を蹂躙して成り上がる2

 

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読書感想:平民出身の帝国将官、無能な貴族上官を蹂躙して成り上がる - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で、世に蔓延る貴族出身の、腐敗した無能な悪役を成敗していくという、ヘーゼンの悪魔的な活躍はお分かりいただけたであろう。前巻の内容からすれば悪魔を通り越して魔王、と言えるかもしれないが。しかし皆様、こうは思われなかっただろうか。そも、彼、何故軍に入ったのか。何故、こうも周囲を平らげていくのか、と。

 

 

別に軍人にならずとも彼ならどこでも大成出来そうだし、彼の聡明ぶりであればまず虐げられる事は察しそうなものだが。そこに首を傾げれど、まだその理由は判明せず。しかし彼の本心、狙いの一端が明かされるのが今巻なのである。

 

「ご自由に。やれるのなら、誰がやったっていい」

 

前巻で撃退した、異民族であるクミン族。残るは和平交渉、しかしシマントを始めとする無能な上官により、ヘーゼンは不敬罪により謹慎処分になり。だけど彼はどこ吹く風、気にした様子すらない。

 

それは何故だろうか。現場にとってヘーゼンこそが仰ぐべき上官と認識されたからか。現場からの反発にあったシマントが慌てて謝ってくるも意に介さず、それどころかヤンに一芝居うたせ、彼女に腐敗貴族の実態を見せると言う名目の元に送り出す。

 

「私は、優秀な方に帝国の上に居て欲しいだけです」

 

「最短で二年後、あなたたちの力を借りる時が来るかもしれない」

 

さて彼抜きで、無能な者だけで纏める事が出来るのか、当然無理である。それどころか帝国にとって重要な土地だとも知らず差し出してしまう程の無能ぶり。本格的に復帰を求められ、彼がどうしたかと言うと。ロレンツォに功績を押し付け出世への道を切り開き。クミン族へ豊かな山岳地帯を譲ると言う条件を持っていき、講和を纏める。

 

条件が纏まるまでの間、女王に明かした思いの一端。最短で二年後、という時にクミン族という異民族の力を借りたい時とはどういうことか。 その後、彼に待っていたのは異動と昇進。今度は統治が難しい領地の内政官、中間管理職。異動した先で待っていたのは、やっぱり無能な上官と、問題を抱えすぎたやせ衰えた領地。

 

「しかし、彼女が成長した時には、さらなる飛躍のヒントになり得るかもしれない」

 

そこで何を為していくのか、前にやったように内政改革、無能な上官を〆るための一手。今度はヤンに色々と教え込みながら、民草と同じようにと極限まで自分を追い込んで。 一度きりの一手を使わされる、という事態に溜息を吐きつつ、また魔王的な奸智を巡らせていくのである。

 

前巻の後始末、そして新たな舞台での始動が描かれる今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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