前巻感想はこちら↓
修学旅行、それはいつもの日常から離れて違う舞台で綴られる日常のお話であると私は思う。しかし、この作品においてその国への修学旅行は、やはり一筋縄ではいかないものであるのだろう。
ではこの作品の修学旅行は何処になったのか? その答えはイリスの故郷、アブソリュート帝国である、というのが今巻のお話である。
ハルトにとっては正しく怨敵のお膝元、アウェーにも程があると言わんばかりの国。しかしそこはイリスの故郷であり、そこには自分の知らぬ彼女の顔があり、自分の知らぬ彼女を取り巻く関係があるのである。
その一つ、それこそが今巻のキーパーソンとなるイリスの許嫁、ヴァリオである。
無論、画面の前の読者の皆様も分かっていた節はあるであろう。ハルトとは正しく禁断の関係であり現状認められるわけもなく、そしてイリス程のお姫様であれば許嫁の一人や二人いてもおかしくない筈、と。
しかし、ヴァリオにはヴァリオでイリスと結婚できない理由があった。それは何か。それこそ、ハルトとイリス程ではないがこの世界の基準においては絶対に許されぬ恋、身分差恋愛である。
その相手については画面の前の読者の皆様各自で確かめてみてほしい。しかし重要なのは、ハルトとヴァリオはある意味似た者同士という事である。
そう、似た者同士なのである。確かに敵国同士である国に所属する二人の間に友情というものは成立しないのかもしれない。しかし、同じ恋の重さを抱えるからこそ。ぶつかり合える関係があるし分かり合える一線があるのも確かなのである。
そんな二人にイリスがちょっとモヤモヤしたり、再びちょっかいをかけてきた敵が今度はヴァリオの身体を乗っ取り大騒動を巻き起こすのに立ち向かったり。
「そこで大人しくしてるんですよ♪」
少しずつ世界を広げていくのかと思えば一気に世界を広げ、その中で久慈先生らしくエロスに満ちたハプニングを繰り広げながら魅せていくのが今巻である。
故に、画面の前の読者の皆様の中で一巻を読んだという方は是非今巻も見てみてほしい。確かな実力に裏打ちされた面白さが更に深まる様を見ることができる筈である。