読書感想:飛び降りる直前の同級生に『×××しよう!』と提案してみた。2

 

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読書感想:飛び降りる直前の同級生に『×××しよう!』と提案してみた。 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、愛にど真ん中なバカであるけどちゃんと大切なものは見えている、いわば「頭の良いバカ」である貴一とそんな彼に助けられた胡桃という割れ鍋に綴じ蓋的なバカップルであるこの二人。貴一のある意味真っ直ぐすぎる愛に胡桃は救われている訳であるが、ここで彼女が幸せに辿り着くために必要なものは何であるか、画面の前の読者の皆様はお察しであろう。それ即ち「過去の清算」。かつて自分の望まぬ輝きが崩壊させてしまった、家族の形に向き合わなければいけないのである。

 

 

「俺も楽しみだよ、新婚旅行」

 

「新婚旅行じゃないから」

 

いじめ問題を解決し、正式に恋人同士となり。もはや止めるものが無くなったことで更に貴一の愛は高まり、ぐいぐいいくようになって。そんな彼に胡桃もまんざらではない様子を見せ、それが当たり前の光景として受け入れられるようになっていって。そんな彼等の元へ舞い込んでくるのは、京都への修学旅行のお知らせ。学生にとっては花の一時。当然、付き合いたての恋人同士である二人にとっては盛り上がらない訳もなく。清水の舞台を始めとした神社仏閣を巡ったり、久しぶりの遊園地に子供らしくはしゃいでみたりして。

 

が、しかし。そんな幸せな日々の中、胡桃の表情には一筋の陰りが見える。その理由は修学旅行の前、父親からの一年振りの連絡があったから。会いたいと言う願いに応じ、久しぶりに二人で向き合って。告げられたのは、京都でまた家族で暮らさないかという提案。

 

「それ以上は、言っちゃだめだよ」

 

「なら将来的に家族になるので何の問題もありませんね! 全力で挟ませていただきます! お義父さん!」

 

 今更何を、と激情のままに叫びそうになって。それを押しとどめるのはその場に駆け付けた貴一の真剣な眼。そして彼は胡桃の父親に対しても物怖じする事もなく、真っ直ぐにずけずけと切り込んでいく。どんな相手でもいつも通り、一見すると馬鹿だけど、ヤバいけれど。それこそが彼の良さ。その良さに再び救われ、胡桃は自分は大丈夫だからと断りを入れる。

 

「い、一度しか言わないから、よく聞いて」

 

さらに盛り上がり、もっともっとと求め続けて。その果てに一線へと踏み込んでいく。だがそれは至極当たり前であり、二人がともに望んだ結果である。ならば心配せず祝福すればよいのだろう。このお馬鹿なバカップルは心配なんて跳ね除けていくはずだから。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

飛び降りる直前の同級生に『×××しよう!』と提案してみた。 2 (電撃文庫) | 赤月 ヤモリ, kr木 |本 | 通販 | Amazon