読書感想:家で知らない娘が家事をしているっぽい。でも可愛かったから様子を見てる

 

 さて、時に世の中を賑わせる犯罪に「ストーカー」というものがある。印象としては有名人や芸能人が被害に遭う、と思われる方も多いかもしれないが実際は誰にでも起こりうる話であり、中々実害が無ければ警察も動いてくれぬ厄介なタイプの犯罪である、らしい。対策としてはSNSで投稿する際は身バレを防ぐ、等色々あるのだろうか。

 

 

という訳でこの作品は、そんなストーカーとの間に始まるラブコメなのである。え、一体どうやったらストーカーとラブコメになるの? と思われた方、どうか警戒と疑念は緩めていただきたい。言うなればこの作品は割れ鍋に綴じ蓋、変人同士のラブコメなのである。

 

基本的には仏頂面、しかし内実はわりと何でもそつなくこなす大学生の青年、遥斗。とある、メジャーデビュー間近のビジュアル系ガールズバンドが贔屓にしていたりする喫茶店でバイトしたりしつつも特にイベントもない大学生活、かと思いきや。最近彼はストーカー被害を受けていた。一人暮らししている家の合鍵を紛失した事で、最近ストーカー被害を受けるようになっていたのだ。

 

「最近はそのストーカーのことを妖精のシルキーと思って黙認してる」

 

が、しかし。普通なれば通報一択、とりあえず家の鍵は交換一択であるこの状況。交換は金がかかる、あと通報したら対応が面倒。あと今更反応するのも癪、それと家事をやってくれるので助かる、という事で。彼はそのストーカーの事を、家事をしてくれる妖精、シルキーみたいなものと認識し。話しかけられても無視はするが、家事事態は黙認という。よく分からぬ関係性を選んでいたのである。

 

「―――今更ではありますが、この場を借りて自己紹介と謝罪をさせていただきます!」

 

よく分からぬ関係性のまま続く日々、その中、主人公の知らぬ所、謎のストーカーの周りで動きがあり。遥斗が大学をサボっていたある日にやってきたストーカーは唐突に自己紹介してくる。自分の名前は蘭(表紙)、遥斗のバイト先の常連のバンドのボーカルであると。

 

 

では何故気付かなかったのか? その理由とは、蘭たちが来店する際はバンドの服装の為イメージが合致せず、自己紹介もしていなかったのでそもそも誰だか分からなかったという何だそりゃという理由で。ナンパから助けられた事で好意を抱いた蘭が、遥斗が家のドアにカギを差しっぱなしにしてしまい、ストーカーが始まったと言う事である。

 

 

「私が言うのもアレだけど、その考えマジでヤバいと思う」

 

つまりは遥斗は、ギリギリ実益が勝るから黙認できるという変人で。蘭は蘭で、重い愛が目覚めたら何処までも行っちゃうある意味恋愛ポンコツな変人で。変人同士、正に噛み合うものがあってしまった、訳で。

 

「それだけ私が隣にいること、自然に思ってるってことでは?」

 

そんな二人によるドタバタな、だけど何処かほのぼのとした関係は。公認になってまた始まっていくのである。

 

癖の強めで異色め、しかし内実はテンション高めなドタバタラブコメであるこの作品。ドタバタしたラブコメが好きな読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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