さて、今の世界では新型コロナウイルスが流行しているというのはもはや語るまでもないであろう。いつの日か、未来で語り草となるかもしれないし、歴史の授業に乗るような出来事となるのかもしれない。ではもし、いつの日かこの事態が収束したのならば。今現在のニューノーマルの形である「リモート環境」というものは残るのだろうか、それとも廃れるのであろうか。答えはまだ、誰にも分らぬものである。
しかし、リモート環境と言うものはラブコメにおいて新たなシチュエーションを生み出しているのも確かである。他の人には見えず、画面の向こうからはこちらが見えないと言う状況は、秘密の状況を生み出せると言うメリットを生む事に他ならぬ。
と、ここまでを読まれた読者様はタイトルからもこの作品がどんな作品であるのかを大体お察しいただけただろう。その通り、この作品はニューノーマルな価値観をこれでもかと生かした作品なのである。
パソコン部に所属すると言うこと以外は特徴もない、とある高校の学生寮で暮らす少年、叶斗。しかしある日、今流行のウイルスのまん延により学生寮でクラスターが発生してしまい。運悪く状況説明と退去に乗り遅れた事で、荷物も持ちだせず外へと放り出されてしまったのである。
「私は、わいふぁいを捕まえにきたの」
しかし、彼を拾う神があった。かなりの奇行と共に現れたが。野宿の為に訪れた公園で出会ったのは、クラス一の美少女、遥(表紙)だったのである。
Wi-Fiを設定してほしいとお願いされ、彼女が一人暮らしする高級マンションへと連れ込まれ。容易く設定は完了したけれど、何だかんだと心配されて気が付けば彼女の家に間借りすることになり。
意図せずして始まった同居、もとい同棲生活。今まで縁もなかった少女の真意を測りかねる中、遥は何故かポンコツな振りをしたり、リモート授業中に見られぬように悪戯を仕掛けて来たり。可愛らしく、時にいじらしく。叶斗へとちょっとだけ空回り気味なアプローチを仕掛けていく。
もうお分かりであろう、遥は叶斗に、ふとした切っ掛けから一年以上も片想いをしている。そんな彼女がこの好機を逃す訳もないのである。
どきどきさせられ、振り回され。そんな日々の中、それでも少しずつ距離は縮まっていく。彼女の存在が、少しずつ心の中で大きくなっていく。
だからこそ、彼女がかのウイルスを思わせる症状を出してしまった時に。自分を嫌う遥の親友にも頭を下げ、自分も感染するかもというリスクを考慮せずに彼は飛び回り奔走する。
「・・・・・・でも私、吉野くんのそういうところ、嫌いじゃないよ」
強情かもしれない、頑固かもしれない。理性的でも、論理的でもない。それでも彼女には元気でいてほしいから。笑顔でいてほしいから。今まででは思いもしなかったその思いは、きっと恋の萌芽なのかもしれない。
こっそり繰り広げるいじらしいラブコメが好きな読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
リモート授業になったらクラス1の美少女と同居することになった (GA文庫) | 三萩せんや, さとうぽて |本 | 通販 | Amazon