読書感想:語学留学に来たはずの貴族令嬢、なぜか花嫁修業ばかりしている

 

 さて、イギリスと聞いて画面の前の読者の皆様は何を思い浮かべられるであろうか。例えばロンドン塔のような、怖い話もある観光スポットだろうか。それとも競馬もお好きであられたかの女王か、若しくは不味いとあちこちで言われるご飯だろうか。そんな国には貴族、爵位という制度もあるらしいが。実際爵位というのはどういうものか、と聞かれて詳細に応えられる読者様はそうはおられないかもしれない。

 

 

それもまぁ仕方のない事かもしれぬ。なんせ爵位というのは現代日本では縁がなく。隙で調べでもしない限り、あまり知識としては深めないジャンルとも言えるかもしれない。この作品においてヒロインとなるのはイギリスの貴族令嬢、アメリア(表紙)なのである。

 

半年前までイギリスの全寮制学校に留学していた少年、聡太。日本に帰国し、高校二年生となろうとしていたある日、彼の家に留学生がホームステイにくる事になり。日本のサブカルで意気投合した女の子、メアリーかと思ったら来たのは、メアリーの友達として仲良くなり、日本に帰国する時に喧嘩別れしたアメリアだったのだ。

 

「はなよめしゅぎょう、です」

 

何故日本に、彼の家に? そう聞いてみたらアメリアは花嫁修業、と言い。クラスでの自己紹介時に聡太の家に同居していると爆弾をぶっこんだり、聡太の母親に料理を習ったり。正に花嫁修業的な事を始め出したのだ。

 

さてどういう事か、ネタバラシといこう。重要なのは聡太が呼ぶ事を許されているアメリアのミドルネーム、「リリィ」。聡太からすれば何でもない呼び名、故に彼のアメリア、以下リリィの認識は普通に友達。しかしリリィからしたらこの呼び名はメアリーを除けば家族だけ。つまりリリィからしたら聡太は恋人であり、そんな恋人が自分を置いて帰ってしまうからこそ怒って喧嘩してしまったのだ。

 

そうとは知らず、聡太はリリィとは友達として接するも距離の近さに悶々とし。リリィはリリィで、聡太と何故か距離の近い同級生、美聡にもやもやしたりライバル意識を抱いたりして。聡太の属するテニスクラブで、リリィと美聡が激突したり。リリィが聡太に下着を選んでもらったり、大正風なコスプレをしたリリィと東京観光にお出かけしたら、テレビの取材を受けて国際カップルと報道されてしまったり。何だかドタバタなそんな中で。体育祭の日、事前にメアリーと電話で会話し、自分のやらかしを自覚したリリィは聡太とやり直しをしたいと願って。

 

『・・・・・・元の関係に戻りたいです。お願いします』

 

正直に自分の思いを話して仲直り、元の関係に戻って。その先に美聡と聡太が、両親の離婚によって分かれた双子であると明かされて。安心し関係は戻る、のである。

 

けれどまだお互い知らぬ事もある。聡太からすればリリィは「親友」、であり。両親の離婚という経験と、リリィのある日のとある態度により恋人ではなく友人を望んでいるという事を。 つまりすれ違いは未だ解かれておらず。リリィの越えるべき壁はまだまだあるという事である。

 

割とドタバタ、しかし可愛らしい甘さのあるこの作品。萌えるラブコメが読んでみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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