読書感想:僕を振った教え子が、1週間ごとにデレてくるラブコメ

 

 さて、塾、もしくは家庭教師と言うものの指導を受けた事がある、もしくは現在進行形で受けているという読者様もおられる事であろう。最近は個別指導のトライがさかんにCMで宣伝を打っている訳であるが、実際塾の方がいいのか、個別指導の方がいいのか、というのは個人個人によって異なるであろう。しかし、受けたことのないという読者様は多分、少ないかもしれない。

 

 

その指導を受けるのは何のためか、それはきっと受験の為、という場合が多いであろう。私も高校受験の時、塾のお世話になっていたことがあるので。この作品もまた、そんな塾から始まる物語であり。指導という形で繋がるラブコメなのである。

 

「わたしは、証明したいんです。自分の力で前に勧める力があるってことを」

 

かつて同じ塾に通い、勉強を教えていた一個下の後輩、ひなた(表紙)に志望校の合格を機に告白するも、敢え無く失恋してしまい。塾を辞めて失意の日々を進む少年、瑛登。彼にある日、何気なく登録していた塾のOBを対象にした家庭教師アプリに舞い込んだ連絡。それは、あのひなたからのもの。最近成績が下がり始めている彼女に家庭教師を依頼され、折れた自分とは異なりまだもがき続けている彼女の熱に押されて。彼女の家庭教師を引き受ける事となる。

 

「先生、わたしのこと、好きになっちゃダメですからね・・・・・・」

 

始まる家庭教師、実績がないけれど彼女の為に、世界一の家庭教師を目指して。勉強していく中で、オンラインで授業をしようとしたら、あられもない事態を目撃しかけたり。瑛登の通う高校の学園祭にひなたがやってきたり、空模様が急に荒れた日に、ひなたの家に泊まり込むことになったり。 そんな日々の中、少しずつひなたの心の中に。捨てた筈、見逃したはずの恋の思いが芽を出そうとしていく。好きになっちゃダメ、と押し留めようとするのに。あの日と変わらぬ思いを、と願ってしまっていく。自分の心の中の感情に未だ名前もないのに。

 

「だって先生は、わたしの家庭教師ですから!」

 

そんな中、戦わねばいけぬ相手がいる。それはひなたの母親。不器用に娘を愛するが故に、その道を自分の定めたルートに導こうとする親。だけどひなたは、貫き通したい。自分の選択を、自分の力を。二人で母親と向かい合って対決し、ひなたは自分の選択を貫くために模試に挑んで。自分の望んだ結果への一歩を掴み取るのである。

 

勉強と言う事に向き合って、熱い展開をする中で恋愛未満の恋が見えるこの作品。ちょっと始まりが違うラブコメを読んでみたい読者様は是非。 きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: 僕を振った教え子が、1週間ごとにデレてくるラブコメ (電撃文庫) : 田口一, ゆがー: 本