読書感想:琴崎さんがみてる ~俺の隣で百合カップルを観察する限界お嬢様~

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 さて、昨今のラノベ業界において、百合ものというのは一つのジャンルを築きつつあるというのは画面の前の読者の皆様もお気づきではないだろうか。「ありおと」や「わたなれ」といったみかみてれん先生原作の書籍に端を発するかのよう野、今は「ガールズラブコメ」、通称ガルコメと呼ばれている百合ものの作品達。では、そんな作品達の中にほぼ共通しているであろう事項とは一体、何であろうか。

 

 

その答えのあくまで一例としては、「男性の登場人物の存在の無さ」があげられるのではないだろうか。例えば同級生として、もしくは父親として。その辺りの範囲でも徹底的に廃されることの多い男性キャラ。しかしそれもまた仕方のない事かもしれない。ガルコメというのは描き方の違いはあれど、魅力は女の子同士の恋といちゃいちゃであり、男はお呼びではないからである。

 

 ではもし、そんなガルコメにボーイミーツガールの方のラブコメが上手く絡まっているとしたらどうであろうか。そんなラブコメの主こそ、この作品の主人公である瑛人(表紙左)とヒロインである入愛(表紙右)である。

 

「お久しぶりですね、瑛人さん。お会いしたかったですわ・・・・・・!」

 

今年から男女共学となった元お嬢様女子高、私立猫丘学園。だがやはり鉄壁であった乙女の園への入学希望者は少なく。数少ない例として入学した瑛人は幼馴染である入愛と再会を果たす。

 

 二人には幼馴染と言う繋がりではなく、一つの同志的な絆があった。それは互いに百合が好きであるという事。そして入愛の趣味は、百合なラブコメを繰り広げる者達の人間観察であったのである。

 

「この学園にまた一つ・・・・・・素敵な百合の花が咲きましたわ!」

 

ある時は同級生同士、またある時は主従関係。様々な関係の少女達が繰り広げる不器用な愛。そんな百合ラブコメの波動を観察者に徹し、時に少しだけ手を貸したりしながらも見守り快哉を上げる入愛。そんな彼女の同志として、己の心を殺し律しながらも共に見守る瑛人。

 

「―――あの時、絶対に破ることのできない百合色の”約束”をしたから」

 

 唐突な光景に思わず入愛の心が揺らぎ、過去のトラウマを抉られそうになり。だけどそれでも、と。瑛人は約束を口にし、入愛と何度でも向かい合う。幼き頃、傷ついた彼女の壊れそうな心を守る為にした「約束」を守る為に。

 

観察者として見守るガルコメの裏、繰り広げられるのはラブコメ未満のラブコメ。まだ何も咲かず、だが確かに蕾を綻ばせ始めた百合にも劣らぬ美しさの花となるであろうラブコメ

 

発売前にプチ炎上をし、ネット上の評価も中々に厳しい意見の聞こえてくるこの作品。

 

だが、私は敢えて言いたい。この作品は面白いと。

 

web版を知っている等の理由でどうしても引っかかると言う読者様は、一度すべてをリセットし真っ新な目で見てほしい。

 

そもそもガルコメに男性がいるのが嫌いという読者様は、嫌なら別に無理されなくても構わない。

 

だけど、それでも良い、読んでみたいと言う読者様は是非読んでみてほしい。この作品の中にある独特の面白さを見つけてみてほしい次第である。

 

五十嵐雄策先生のファンの皆様、ラブコメもガルコメも好きと言う皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

琴崎さんがみてる ~俺の隣で百合カップルを観察する限界お嬢様~ (電撃文庫) | 五十嵐 雄策, 佐倉 おりこ, 弘前 龍 |本 | 通販 | Amazon