読書感想:俺がどんな選択をしようが、SS級美少女たちが全力で注目してくる

 

さて、著者である春日部タケル先生と言えば、勢いの強い個性的な作品を幾つも出版されていると言う事で有名だと思うが、アニメ化もされた「のうコメ」こと、「俺の脳内選択肢が、ラブコメを全力で邪魔している」という作品をご存じであられる読者の皆様はどれだけおられるであろうか。かの作品は、脳内に突如湧いてきて選ばないと頭痛で選ぶことを催促してくる選択肢が混沌を引き起こしている訳であるが。令和になって、かの脳内選択肢が帰ってきた。また、かの混沌を引き起こすべく帰ってきたのである。

 

 

しかし、前述した作品とはちょっとだけ違う所がある。かの作品では、脳内選択肢のせいで嫌われる事から始まった訳であるが。今作品では、逆に好かれていくのである。それは今の時代、ならではなのかもしれない。

 

あらゆる分野において、超高校級の生徒達が集う帝桜学園、という高校。才能絶対主義を掲げるこの学園に君臨する、天才や怪物と呼ばれる異端児たちがいた。その名も「低桜十咲」。 特に今年はあらゆる面において歴代最強、と言わんばかりの面々揃い。その学園へとスカウトされた少年、陽太。両親が国民的大スターである彼の望みは、しかし一つだけ。

 

「―――目立ちたくないんです」

 

 その願いとは、とにかく地味に、平凡に生きていくと言う事。では彼は、一体どんな特異性を持っているのか、という事であるが。その名とは「不運」。 犬も歩けば棒に当たるどころではなく、もはや世界やら運命に嫌われているのでは、というレベルで小さな不幸がこれでもかと襲い来る。

 

【選べ ①豚の真似をして四つん這いになる ②女王様に踏まれる豚(人間)の真似をして四つん這いになる】

 

 

そんな彼は、スカウトしてきた理事長から「十咲」をぶっ潰せ、とお願いされるも断って。だが転校して挨拶早々、いきなり脳内に沸いてきた謎の選択肢。混乱の中でさっさと選べと頭痛に見舞われ。結果として変な行動をしなければいけなくなるも、それが何故かいい方向に左右されて受け入れられる事となる。

 

「本来、人間界に存在しちゃいけないもの。私の目的はその『呪い』の解消なんだ」

 

一体、何が起きているのか。唐突に天から落ちてきた、天使と名乗る少女、コロネ(表紙中央)はこれが天界由来の呪いであると語る。以前も似たような事例があり、その時は脳内選択肢だけだったが、陽太の場合は天文学的な不幸体質も相まって、より面倒になっていると言う事。 二つのマイナスが絡み合って、プラスになる事もあれば、マイナスの連続にしかならぬ場合もある、というまぁ面倒なものだったのである。

 

しかし、何者かの意思で押し付けられたとはいえ、とりあえず受け入れるしかなく。スーパースターを目指すアホの子、月花(表紙右)と仲良くなったり、弁論大会での優勝経験もあるクラスの女王、麗奈に最低な議題での弁論対決を挑まざるを得なくなったり。留学生として潜入してきたコロネも加わり、賑やかな日々を過ごす中。 十咲の一人であり全てにおいて完璧な超人である代わり、感情が死んだ少女、テラ(表紙左)に挑むことになり。感情表出が苦手な彼女の本質に迫り、その心を解きほぐそうとしていく。

 

「「「「「大供爆発しろ」」」」」

 

だけどやっぱり、脳内選択肢がいつも混沌を巻き起こして。 それでも最後は力技で、何とか纏まってしまうのである。

 

令和に新生、ちょっと懐かしいドタバタコメディー、そんな今作品。心を元気にしたい方は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: 俺がどんな選択をしようが、SS級美少女たちが全力で注目してくる (角川スニーカー文庫) : 春日部 タケル, 塩かずのこ: 本