読書感想:天才女優の幼馴染と、キスシーンを演じることになった1

 

 さて、仮面ライダー俳優、というのは俳優としての登竜門とも言われているらしい。それもまぁ、納得かもしれない。 主人公役の俳優の方の顔つきを、一話と最終話で見比べてみると、別人か? と思わず疑ってしまう程に、顔つきからして違うので。というのはともかく、ラノベにおいて、声優ものよりも俳優ものの方はあまり見かけない気がするのは、私だけなのだろうか。もし見かけないとしたら、何が難しいのか。

 

 

と、いう前置きもおいておいて。この作品は、俳優世界が舞台となる作品であり。演技、お芝居を通して両片想いの絆を深めていく作品なのだ。

 

幼い頃、共に役者となって大きな作品を作る、という約束を交わした幼馴染同士、海斗と玲奈(表紙)。約束から八年後、玲奈は人気女優となり。海斗はまだ、最近やっと脇役や端役が貰えるようになった下っ端俳優。

 

「そうしたら使ってくれる人はいるよ。俺を含めてな」

 

だが、海斗の中にも目覚めかけている強みがある。それは台本理解の深さと観察力、勇動力と引き立て力というクレバーな技術。見る人が見れば分かる技術を、とある監督から褒められる中。彼にその監督の御指名で、大役が舞い込んでくる。

 

「ほら、八年前の引っ越しの日も―――確かこんな快晴だったよね?」

 

それは話題となっているドラマ、「初恋の季節」の主役と言う大役。しかもヒロイン役は玲奈。海斗の通う学校に転校してきた彼女と再会するも、近づくことは出来なくて。だけど始まった撮影の中、勇気を出して玲奈に俳優の域を超えて話しかけ。 再会から数週間を経て、彼女とやっと本当の意味で再会を果たすのだ。

 

「海斗に聞かれたら恥ずかしいかなと思って言えなかっただけなのっ」

 

そうなれば、もう心の壁を超えたも同じ。あっという間に二人、かつての心の距離を取り戻し。ひたむきに夢に向かう玲奈の変わらぬ思いと、自分の前だけでは見せてくれる飾らぬ、演技せぬあの時と変わらぬ素顔を垣間見て。 ドラマの宣伝に様々なバラエティに引っ張りだこになったりしながら。 玲奈の実家にお泊りしたり、学校で二人、秘密で台本の読み合わせをしたり。お互いにいい影響を与え合いながら、つつがなくドラマ撮影は進んでいく。

 

が、しかし。ここで感覚派の女優である玲奈が、役に嵌り切れぬという問題から本命であるキスシーンの撮影が難航するというトラブルが発生し。 監督の提案で、二人で遊園地に行き。ドラマのシチュエーションを体験する事で、玲奈の感覚を取り戻すことに成功する。

 

「監督、玲奈ってどんな女の子だと思いますか?」

 

しかし、海斗の心の中に突き刺さる小さな違和感。 その正体は、幼馴染として知るからこその違和感。 ならばそれをどうすればいいのか。 幼馴染としての面から見て、共演者の良さを引き出す俳優としての力で。玲奈の素の魅力を引き出し、更にドラマを盛り立てることに成功するのだ。

 

 

両片想いのじれったさと、確かに深まる甘さが見所である今作品。幼馴染に萌えたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。