さて、スパロボことスーパーロボット大戦のボス機体に付与されている強力なバリアは湾曲フィールドだったか、歪曲フィールドだったかどちらだったか。そろそろ版権作品を新たに追加したスパロボもやりたい次第であるが。と個人的な思いも兼ねた前書きになってしまったがこの作品にはスパロボは関係ない、それどころかロボットは一つも出てこないと言うのは先に言っておきたい。では何が重要かと言うと、歪曲、歪みと言うのが重要なのである。
性格であったり、輪郭であったり。様々なものに歪み、という言葉は適用されるであろう。この作品においてはそんな歪み、この世界の歪みを内包した「歪理物」と書いてヴァニットと呼ばれる超常の物体が重要なのだ。
かつて、願いを叶える代わりに持ち主に破滅を与える魔剣、神話の時代から存在する歪理物のティルフィングに「生きたい」と願い。 歪理物をも斬れる剣と、まるで運命に愛されているかのように死の運命に対する運の良さと引き換えに、周囲に死を齎し呪いを齎す運命を背負わされた少年、迅(表紙左)。かれは大企業の秘密部隊、「金糸雀」の一員として、歪理物の蒐集、または破壊の任務に励んでいた。
「ま、少なくともお前だけは解放して見せるよ、絶対にな」
その目標は只一つ。かつてティルフィングに魅入られ周囲の全てを殺し尽くしてしまった自分を救ってくれて、けれど自身の歪みに巻き込んでしまった大切な少女、佐倉。彼女を依り代として誕生した生きる歪理物、アーカイブ(表紙右)から彼女を解放するために。 概念に対する超常的な力を持つ代わり、自身の核である書に記された通りにしか行動できぬ彼女を救う為に。それが例え彼女を切り捨てることに繋がったとしても。
そんなある日、舞い込んできたのは「無題」と呼ばれる書の歪理物の破壊任務。周囲全ての固有名詞を持つものを食ってしまうと言う、哲学的ながらまぁ面倒な書を解放してしまった少女、日継と出会い。彼女に隠されていた驚きの秘密を知り、それでも生きていて欲しいと破壊しない願いを見出し、彼女を保護する事に成功する。
「・・・・・・これも決められたことです」
しかしそこからが流転するカタルシスの始まり。描いた絵を現実化するペン、それを齎したのは死んだ筈の、日継の父親である朝日。不穏なものを感じる中、世界を創り出す木に遭遇した時に、朝日は自信の作品と共に姿を現し。アーカイブは決まっていた運命といって、裏切ってしまう。
「それを思うだけで俺は、どんだけでも頑張れる!」
流転する状況、倒さねばならぬのか、彼女を。選択を突き付けられる中、その選択肢の天秤をぶっ壊してくれる一手を日継が取り。選択肢の否定、その先の新たな選択肢を見せてくれた彼女と共に、アーカイブも取り戻し。今度こそ最終決戦へと向かい、躍動して。
「今私たちが立っているこの場所は、私たちが自分で掴み取った未来ですよ」
そしてその先、運命を越えて一つ、未来を取り戻し。また決意を固め歩き出していくのだ。
最後の最後までカタルシス、正しく疾走感のある熱さが魅力であるこの作品。ど真ん中に心熱くしたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。