さて、この世には「マッチングアプリ」というものが存在している。例えば画面の前の読者の皆様も何らかのコマーシャルをどこかで目撃された事もあるであろう。マッチングアプリで恋人と出会われた事のある読者様もおられるかもしれないし、今の時代においては有用なアプリであるだろう。しかしアプリのプロフィール画面に表示されているその人が、本当にその人そのものかという点は不透明な事もあり、様々な問題が隠れている事も多いため注意が必要である。
ではこの作品は一体どういった作品なのか、タイトルそのままである、Q・E・D。そんな戯言はさておきこの作品は、マッチングアプリが重要な因子となる作品であり。リアルちっく割り切れぬ情動が溢れている作品なのである。
彼女と別れて久しい、ごく普通の大学生である青年、翔。未だに未練を引きずる彼は、友人である縁司の提案により「コネクト」というマッチングアプリに手を出し。とりあえず顔写真は使わぬままに始めて見た所、縁司も驚くほどのマッチ率を叩きだした相手が現れる。
趣味も性格もまるで合わないけれど、何故か馬が合う。まるで運命的に惹かれ、あっという間にリアルで会う事を決める翔。しかし運命的とはこういうものか。当日、彼の前に現れたのは元カノである光(表紙)だったのである。
文化祭マジックで付き合っただけ、今はもう特に思う事もない。素直になれぬやっかいなプライドで、ついつい喧嘩腰になってしまって。しかし何故か、どこか悪戯的に会う機会が増えていて。二人で出かけたり、飲みに行ったり。まるであの日の続きを取り戻すかのように、二人で過ごす日々が増える中。翔の心は揺れていく。
だがそれだけではなかった。もう一人マッチした高相性の相手、同じ大学のぼっちな美女の心。引っ込み思案な彼女とペースを合わせるかのように付き合い、共に過ごす時間が増えていて。新しく始まろうとする恋もまた、翔の心を揺らしていく。
かつての恋、新たな恋。光も翔も、二つの恋の間で揺れ惑って。懸命に踏み出そうとしていくその足を、拭いきれぬ未練が留める。大人になり切れぬ彼等の背を、青くて苦い未練が引き留める。
「でも、誰かに取られたくないって、そう・・・・・・思うんだ」
譲れない、逃がさない、渡さない。それは一体何から来る思いか。それは自分にだって分からない。けれどその思いが、未練が。翔を光の下へ押し出していく。言えずにいた思いが、今叫びたいと駆け出していく。
『私が、忘れさせてあげます』
だけど、その未練は本当に正しいものか。そう突き付けんばかりに新たな恋が本気で動き出す。翔の心を攫おうと、鳴動を始めていく。
青くて苦くて若い、割り切れぬ恋から始まるラブコメが好きな読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
マッチングアプリで元恋人と再会した。 (角川スニーカー文庫) | ナナシまる, 秋乃 える |本 | 通販 | Amazon