前巻感想はこちら↓
読書感想:マッチングアプリで元恋人と再会した。2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻で翔と光、心の間の三角関係は本格的に動き出したわけであるが、この関係は停滞するのだろうか、と言われると停滞と言うのは、起きると画面の前の読者の皆様は思われるであろうか? 否、そんな事はない。翔の周りの人達がその停滞を許す訳もないし、翔の心もまた、選ばなければいけない、という思いに駆られていく。ならば、止まる事は許されない。進み続けるしかないのである。
「―――先輩を、監視するためです」
と、その前に。一つ波乱の芽が彼等のすぐ側で芽吹く。最近、翔のバイト先で後輩となった少女、田中。その本名は天、心の妹。ひょんな事からその関係が判明し、田中改め天は翔と心の仲を認めないと言い放ち、監視すると声高に宣言する。
そんな中、絵がうまい心は、でも自分には絵を仕事にするのは無理だと首を振り。その真意に迫れず首を傾げる中、縁司から告げられるのは、自分の責任。
「―――いつまでも『わからない』で逃げちゃダメだよ」
そう、逃げちゃダメなのだ。分からないと言う言い訳に逃げ、この凪いだ関係に逃げてはいけない。 選ばねばいけない、それがこの二人と縁を繋いだ自分に課せられた責任。
「全部が完璧な人なんていない。ダメなところを帳消しに出来るくらい良いところがあればいいんだよ」
その言葉に思い出すのは、光の良さ。どんなところが良かったのか、どんなところが嫌いだったのか。確かに嫌いな所もあった、だけど全部ひっくるめて好きだった。だけど今、別れてしまった。もう彼女は隣にいない、そんな痛みが心を苛む。
だけど対照的に、心ははっきりとしてくる。光と心が同時にいる心の中、二人の事を見直していく中で。少しずつ、自分が大切にすべきものがはっきりとしてくる。
「・・・・・・―――さよなら」
「―――今度こそ、ちゃんと話し合おう」
その裏、心の涙を見てしまった光は、自分が気持ちに蓋をしきれなかったから、という芽生えた友情ゆえの罪の意識に悩んで、本当に自分の心に蓋をしようとして、翔の前から姿を消して。その背を追いかけ、翔は今度こそきちんと向かい合おう、と声を掛ける。自分の殻に閉じこもった彼女に、手を伸ばしていく。
動き出した心は止められず、進んでいく恋は隠してはおけない。どんどんと恋が深まっていく中、結論に向かって動き出していく今巻。シリーズファンの皆様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
Amazon.co.jp: マッチングアプリで元恋人と再会した。3 (角川スニーカー文庫) : ナナシまる, 秋乃 える: 本