読書感想:未練タラタラの元カノが集まったら

 

 さて、突然ではあるがこの世の中に永遠の愛、なんてものは多分存在しないと私は想う次第であるが画面の前の読者の皆様はどう思われるであろうか。永遠の愛が存在するのなら不倫も離婚も、それこそ破局という事象も存在しない筈である。と、いう事で破局である。恋人同士が破局すると元カレ、元カノという概念が発生するわけであるが、ラブコメにおいて元カノというのはどう扱われるのか。心強い味方となる事もあるし、引っ掻き回してくる敵になる事だってある。それこそ、元カノとの復縁を描いていくラブコメとてある。この作品もそのタイトルから分かっていただけると思うが、元カノがヒロインとなるラブコメである。

 

 

ごく普通の何処にでもいる少年、広季。彼の特徴というのか分からないが、彼には三人の元カノと呼べる存在がいた。喧嘩別れしたのか、と聞かれるとそういう訳ではない。様々な事情が重なったけれど、どの元カノとも後腐れなく円満に別れた、のである。

 

『そういえばあたしたち、意外な共通点もあったりしてね』

 

『はい! とっても大事な人ですっ!』

 

新学期、何かが始まる時。家が隣同士というテンプレ的幼なじみであり「みゅん」という名前でSNSで活動する今時女子の美優(表紙)。彼女の配信を偶々見た矢先、広季は謎の寒気に襲われる。それは何故かと言うと、コラボ配信という名目で次々と彼の元カノ達が登場し、何とユニットを組んで配信活動をすると宣言したのである。

 

幼なじみの美優、後輩の花音、先輩の千夏。それぞれ別々の時期に付き合い、色々あって別れた元カノ達。彼女達の配信の中、節々から見えてくるのは元カレである自分への思い。更には配信の切り忘れを注意した事から、彼もまたマネージャーとしてその活動に巻き込まれる事となる。

 

「先輩がいるおかげで、わたしたちは本気になることができたと思いますし」

 

やるならば全力で、彼女達の為になる事を考える。元カノ三人組というコンセプトを生かすべく考えを巡らせ皆で意見を出し合って。ラブホで女子会をしたり、デート動画を撮ってみたり。プチ炎上も力に変えていく中で見えてくるものがある。

 

それは変わってしまったもの。一応は元恋人という事で疎遠となってしまった期間に育まれた、知らぬ顔。

 

それは変わらないもの。恋愛禁止というルールで縛ってはいるけれど、変わらない思い。まだ彼のことが好き、出来る事ならまたやり直したいと言う割り切れぬ想い。

 

「こういうことを考えるのも、未練があるからなのかな」

 

そんな三者三様の思いを見つめ、それぞれの思いの形を見つめる事で。広季もまた、彼女達に新たな形で向き合っていく。自らの心の中にある言葉に出来ぬ思いに向き合いながら。

 

どこか爽やかで甘酸っぱい、割り切れぬ恋があるこの作品。変化と不変、その狭間にある恋を見てみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

未練タラタラの元カノが集まったら (電撃文庫) | 戸塚 陸, ねいび |本 | 通販 | Amazon