読書感想:星空☆アゲイン ~君と過ごした奇跡のひと夏~

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 さて、満天の星空という言葉はあるけれど、画面の前の読者の皆様の中でそういう星空を見たことのあられる読者様はどれだけおられるであろうか。空気の澄んでいる方が、人工の光が無い方が星空はよく見えると言うけれど。果たしてそういう星空が見れる場所は、日本の手軽に行ける場所においてはどれくらいあるのであろうか。

 

 

長野県の南に位置する、山に囲まれた田舎であり温泉による観光業である程度栄える村、那智村。普通に考えれば、山に囲まれた田舎であるこの村では星はさぞ綺麗に見える事であろう。

 

 しかし、見えない。何故かこの村では三十年前から一切、天気の良し悪し等どんな条件にもかかわらず、何故か星が見えず月しか見えぬ。村を一歩出れば見える、けれどこの村の中だけでは見えぬ。そんな村で星空を知らずに育った少年、星馬(表紙右から二人目)。隣の市の出身である親友、英人(表紙左から二人目)、幼馴染である旅館の跡取り、千湯里(表紙左端)と共に惰性で日々を過ごす彼はある日、短期留学生としてやってきた少女、プレア(表紙右端)と出会う。

 

まるで只の人間には興味ありませんと言うかのように、彼女は失われた祭りである「聖夜祭」を復活させると宣言し。空回りに活動を始める彼女を遠巻きに見つめる星馬。

 

しかし、彼は衝撃の事実を知る。それはプレアが宇宙人であり、星の消失は宇宙人の仕業であるという事。記憶を消そうとしてくるプレアを丸め込み協力関係となり。更には英人や千湯里達をも巻き込んで。元々は学園祭の後夜祭であった星夜祭復活の為に動き出す四人。

 

 疑似的なプラネタリウムを作る為の資金を稼ぐため、千湯里の実家で住み込みのアルバイトに励み、更には皆で夏祭りへ繰り出したり。そんなひと夏の日々の中、プレアは星馬の過去に触れ、星馬はプレアの言えぬ事情を何となく察し。二人の思いが、少しずつ動き出し変わっていく。

 

気が付けば自然と好きになっていた。頑張る君が、貴方が目を離せぬ存在となっていた。けれど自分達は種族が違う、そして別れは必然。千湯里の星馬への思いに触れ、更には自分の負い目もあり。身を引こうとするプレア。

 

「逃げないでよ」

 

けれど、彼女の一言が心を抉る。逃げる事を許さないと責め立てる。向き合えと心に突き付けてくる。

 

誤魔化せぬ、己の心は。迎えた本番、宇宙の無法者まで襲来し混乱に陥り、それでも願いをかなえるために星空を放ち。やっと取り戻した星空の元、交わす想いは一瞬に。別れは訪れ、全ては忘却の彼方へ消える。

 

「忘れちゃっていても大丈夫です。わたしが全部話しますから」

 

 だが、忘れた筈なのに残っていた思いの残滓がまるで因果を引き寄せるかのように。また星空の元、約束は果たされる。何よりも求めた再会が、また二人の物語を始めていく。

 

どこかノスタルジックに、心温まる出会いと別れとラブコメが心に優しいこの作品。

 

感動の体験をしたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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