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読書感想:お見合いしたくなかったので、無理難題な条件をつけたら同級生が来た件について3 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻で第一部完という事で偽物を超え本物の関係となった由弦と愛理沙であるが、本物になるとはどういう事であろうか。それは即ち、もはや二人の思いを阻むものはないという訳である。きっちりと愛理沙の家にも意思を突き付け、由弦の家にも意思を告げ。一先ず家の事は小康状態、現状波風が立つ要素はないと言う事である。
「俺は幸せ者だよ。こんな綺麗で可愛らしくて、料理も上手な人と結婚できるなんて」
「私も・・・・・・幸せです」
だからなのだろう。思いを伝えるのに何のためらいもなく、真っ直ぐに伝えられるようになったのが。ある時はお花見デートの中、またある時はプールでのデートの中。愛理沙は級友達に唆され背を押され、由弦へぐいぐいと迫り。由弦はそれに戸惑いながらも、不器用ながら彼なりに思いを伝えていく。更に思いは深まっていく、どんどんと愛が育っていく。謳歌せんと言わんばかりに、二人で思いを紡いでいく。
が、しかし。愛理沙の心の中、日々を過ごす中で一つの不安が深まっていく。それは自分が果たして本当に由弦の婚約者として相応しい存在であるのか、という思い。名家の嫁となる存在として、由弦と共に他家の重鎮たちと向き合ったりすることも増える中。自分は本当に、彼の隣に相応しい存在であるのか、という思いが芽生えていく。
そしてそれは、形は違えど由弦の心の中にも不安を生んでいく。踏み出せぬ自分にもやもやが溜まっていく。友人達から指摘された言葉が、心の中に降り積もっていく。
そう、誰だって怖いものは怖い。怖気づいて立ち止まってしまう。だけど、大切なのは怖れを超えて進む事、一歩踏み出す事。由弦の祖父からプレゼントされた温泉旅行の中、二人は今一度お互いの思いへ向き合っていく。相手の心へと手を伸ばしていく。
「君に嫌われるのが怖かった」
「愛理沙が頑張れるなら、頑張って欲しい。・・・・・・俺のために」
必要なのは伝える事。求める事。一歩を踏み出し踏み出させる事。正直に伝え、己の思いを曝け出し。不器用ながらも手を伸ばし、由弦と愛理沙は遂に、いややっとと言うべきか、二人の距離をゼロにするのである。
お互いが大切であるからこそ、怖気づいて。それでも頑張る、一歩踏み出す。もどかしさと甘さが更に深まり熟成されていく今巻。
シリーズファンの皆様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
お見合いしたくなかったので、無理難題な条件をつけたら同級生が来た件について4 (角川スニーカー文庫) | 桜木桜, clear |本 | 通販 | Amazon