読書感想:双神のエルヴィナ3

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前巻感想はこちら↓

読書感想:双神のエルヴィナ2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この世界はヤバい。既に滅びかけである。女神の代理戦争の舞台ともなっている事もあるも、世界の根幹からして既にヤバい、というのは前巻までを読まれた読者様であればご存じであろう。では世界中の恋人同士を破局させる、なんて世界に永久を及ぼせる力をもっと効果的に、間接的に使うのならばどんな方法が良いであろうか。もっと静かに、それでいて気が付いた時にはもう手遅れな方向に侵略をするのならば、どんな方法が望ましいであろうか。

 

 

それこそは、Vtuber。世界中に自分の姿を広めるのならば、世界中に広がっている電脳世界を用いる事が最も簡単な方法であるのかもしれない。その方法をとり、投げ銭代わりに心を吸い取り人間界を侵略するのが今巻の敵である女神、リィライザ(表紙)。天界「最かわ」を自称するアイドル女神である。

 

照魔にとってはネットは弱い部分、エルヴィナ達女神にとってはそもそもの理解が追いつかない部分。そんな部分で戦いを仕掛けてくるリィライザに対し、何故か協力を持ち掛けてきたシェアメルトと百合営業に手を出したりしながら立ち向かう照魔達。

 

 だがしかし、それを黙って見逃すリィライザである訳はない。照魔の関係者である詩亜を言葉巧みに味方に引き入れ、彼女は最悪の策を発動させる。夢幻の迷宮と言う名の、いくらでも作り替えることのできる理想の空間の中へ照魔は囚われ。エルヴィナとの幸せな未来の幻想の中へと囚われてしまう。

 

そんな事は許してはおけぬ。自分の世界を作るのは自分自身、誰の世界も自分達の世界に干渉することは許さない。必死の覚悟と覚醒で何とか夢の世界から飛び出し。助太刀をしてきたシェアメルトと共に、二対一という背を預けられる者のいる、今までとは違う戦いの中へと身を投じる二人。

 

 かの戦いの最中、リィライザの口から語られるのは天界の衰退の原因。人間が性癖と言う名の、「属性」を持ってしまったからこそ、という理由。それでも属性を貫き通すと意地を通し。けれど、和解が出来るはずだった彼女の手は、閃光の中へと消えていく。

 

立ち塞がるは六枚羽の女神三人。対するこちらは限界ギリギリ。もはや絶体絶命、これまでか。

 

「―――少年。好きなものを守るためなら、その好きなものとも迷いなく戦う覚悟を持たなければいけません」

 

 だが、そこへ現れる一つの影。まるで照魔と似た存在を見てきたかのように語る彼女は何者か。それは異界からの来訪者。異界の英雄達を裏から支え、最後は共に戦った「彼女」。

 

女神世界だけではなく、新たな世界と交わり出す世界。その邂逅は何を生むのか。

 

次巻、刮目したい次第である。

 

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