前巻感想はこちら↓
読書感想：陽キャなカノジョは距離感がバグっている 出会って即お持ち帰りしちゃダメなの？ - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻で京介に綾乃は恋をしたわけであるが、初めての恋に綾乃はこれまで通りでいられるのだろうか、と言われるとそうでもなく。特別になりたいと言う思いが加速する、だが不器用な彼女はそれにつれて器用になれるかというとそういう事もなく。燃え上がる思いに振り回されるままに、不器用なままに突き進んでいくのである。
だがこの作品はシリアス、時にビターであるというのは前巻を読まれた読者様はもうご存じであろう。綾乃に関わるビターな展開は前巻でされたわけであるが、今巻では何を語るのか。それは無論、京介である。どこか人と深くかかわるのを避ける、そんな彼に何があったのか。その一端が語られるのが今巻だ。
「どうしてこうなった・・・・・・」
夏休みが始まり暫しの時間が経過し、仕事で忙しい綾乃に会えぬ日々に寂しさを感じる中。京介とは正反対のパワフルさを持つ妹、飛鳥と綾乃が邂逅したのをきっかけに。何故か綾乃が彼女であると勘違いされたまま、彼女も家族旅行であるキャンプについていく事となり。
「ふたりっきり・・・・・・が、いい・・・・・・」
天体観測に出かけようとした矢先、綾乃がちょっとだけワガママを出して二人で天体観測へ出かける事になり。何気ない会話をしながらも、二人で星を見上げ。だが何気なく口にした願い、京介の過去を知りたいと言うものに、京介は怯えた表情を見せ。踏み込めないものを感じ、その反応に嫌われてしまったとお互いに誤解し。お互いの親友に相談しアドバイスを貰い、お互いに空回りしていたと言う事を謝罪し合い、二人は日常に戻る。
だがしかし、波乱はそこだけではなかった。二学期となり早々にやってきた学園祭。綾乃に誰もいない場所に誘い込まれて誰も見たことのないファッションを見せてもらったり、綾乃が受けた何者かの電話に黒い感情を見せていたその根底、小さな独占欲を看破され。少しずつ、また二人の距離は縮まっていく。
だが、その楽しい時間は踏み躙られる。突然綾乃を呼び出してきた級友、藍川は京介と関わらない方がいいという事を諭す。彼は中学時代、女子生徒の財布を盗んだという前科があると。
だがそれは彼自身が見た訳でもなく只の伝聞。そしてその根底は既に見抜いている。毅然と否定し、手を上げそうになった所を京介が庇い。若干変な空気の中、京介は今まで隠していた真実を話す。
それは、中学時代。いじめられていた少女、白雪を救った事で仲良くなったこと。だが、事件の時にもう転校するからと白雪が彼を庇い、それに安堵感を覚えてしまったと言う、拭えぬ過去。「裏切り」の真実。
けれどそんな事は関係ない。何故なら京介の良さは、優しさは知っているから。優しく受け止め、京介の心は一つ救われる。
「めちゃくちゃにぐちゃぐちゃに、惚れさせたい・・・・・・！」
だが、彼女の心の中には赤さだけではなく黒も差した新たな情念が巻き起こる。それは燃えるような独占欲。彼の頭の中を自分で一杯にしたい、という炎のような恋心。
燻り続ける過去が示される中、更に思いが燃える今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
陽キャなカノジョは距離感がバグっている2 ふたりきりでイイコトしちゃう? (ファンタジア文庫) | 枩 葉松, ハム |本 | 通販 | Amazon
