前巻感想はこちら↓
読書感想:バケモノのきみに告ぐ、 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻の最後、探偵事務所「エレメンタリー」を開設したノーマンと四人の「アンロウ」であるが。前巻を読んだ読者様であればこうは思われた事はないだろうか。アンロウの四人、まったく協調性がないな、と。四人それぞれ、自分だけの形でノーマンを好いているし必要とはしているが、それぞれ一人になって他に目を向けると協調性皆無、殺し合うくらい。果たしてこの四人、仲良くできるのか、と。
その辺りに焦点を当てる、四人が二組となって行動する事になるのが今巻であり。アンロウに向けられる政府の思惑や、人間時代の名前など、世界観を広げて本格的に走り出していくのが今巻なのだ。
前巻の事件から約一月。カルテシウスからの任務、と同時に「エレメンタリー」に舞い込む仕事も引き受けるもこちらはシズクは絶対に参加しないという日々も板についてきた中、舞い込んできたのはカルテシウスからの任務、脱獄囚のオーウェンを捕縛せよというもの。
「今回の事件、ロンズデーさんとエルの二人で対応すればいいんじゃないですか?」
その人物とは、ロンズデーがこの街に来る前に捕縛した殺人鬼であり、エルティールの故郷を揺るがした、いわば二人に因縁のある者。ノーマンからの提案により二人で向かう事となり、潜んでいると思しき地下墓所へ。
「そもそも、ノーマンが絡まないお互いのことなんて、ほとんど知らんだろ」
しかし、オーウェンは簡単に見つかるもその後は簡単ではなかった。爆発を引き起こす謎の武器に大苦戦、連携もうまく行かず一旦撤退、下水道を流れてノーマンの知り合いによるホームレスの子供に救助され一旦安全な場所へ。そこで、お互いの事を話しノーマン抜きで向かい合い、ちょっとだけ相互理解。その場にやってきたノーマン、彼が連れていた姉の秘書、アイリスにより武器の正体が明かされる。
首都に居る「双子」と呼ばれるアンロウが作り出した対アンロウ用の武器、「ナインハーブス」。実験台にされたオーウェンはその一つの適合者へと改造され脱走したと言う事。種が分かれば後は戦うのみ。
「温くていいのさ。こいつの熱はノーマンを温めるためにあるんだからな」
「この人の正義はノーマン様が下さったものです。絶対に砕けませんとも」
果たした相互理解、胸に宿るは彼への信頼。だからもう負けられない。全力を賭しお互いの力を合わせた攻撃で、勝利を手繰り寄せる。
「基本は二人に頑張ってもらうことになる」
その先に、クラレスに連れられた女子生徒、レベッカに持ち込まれたのは学校に現れるようになった幽霊、「泣き女」事件の解決。その幽霊とは、シズクの友人であり自殺してしまった少女、シセル。 学園長直々に出禁を食らっているノーマンは参加できず、クラレスとシズクで学校の調査に行くことに。
クラレスとシズクに出来る事とは、何か。体当たり調査で自分達を囮に。犯人は釣れるも、ぶつけられるのは憎しみと幻影。それを乗り越え下手人は止めるも、アンロウを殺そうと現れたアイリスに反発し戦う事に。
「妖精の財宝が、ノーマン君以外にあるとは思いませんでした」
「お互い様だ。涙花の心を震わせるものがノーマン先生以外にあるとはね」
対する事になるのは「ナインハーブス」の一つ。戦う為に必要なのは気持ちを重ねる事。クラレスの咄嗟の策に息を合わせ、一撃を叩き込み。どうしようもなくなりそうな所にノーマンがやってきて、アイリスと交渉し何とか終わらせて。
「もう、終わったことなのに。君はもう、変わりきってしまったのに」
その後のアイリスの独白、そこに仄めかされるのはノーマンの過去。数年前の関係、だけどそれはもうない。バケモノを率い、今は嘯く彼の過去はいつか触れられるのか。
世界観が広がる中、アクションの熱さが胸を焦がす今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
Amazon.co.jp: バケモノのきみに告ぐ、2 (電撃文庫) : 柳之助, ゲソきんぐ: 本