前巻感想はこちら↓
読書感想:株では勝てる俺も、カワイイ女子高生には勝てない。 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻の感想で私は株の世界と言うのは生き馬の目を抜くような血も涙もない修羅の世界、であると語ったと思う。それは今巻でも十分に示されている。愛着のあるものを簡単に捨てる、そんな心を切り裂くような行いがすぐに出来る事を求められる株と言う世界。故にこそ、我々の目から見たこの作品のデイトレーダーの者達はどこか人間として頭のネジが外れているように見えるし、我々では遠く及ばぬ世界に生きているように見える、のかもしれない。
しかし、そんな彼等にも横のつながりがある。何処か人とは違う、そして同じ世界に生きるが故に。繋がりを以て、まるで普通の友人同士かのように振る舞う。
そんな仲間が、主人公である理人にもいる。そして仲間、の中に一人だけ違った意味で大切な者がいる。その名は吟子(表紙中央)。投資の世界で恐れられる「幼女と魔王」の片割れであり、理人にとっては株の師匠である少女である。
「これから吟子師匠もうちで暮らすことになるから」
灯香の理人との大切な日常の中、急に浸食してきた彼女。唐突に告げられた同居。そして彼女は理人との時間を吟子に取られ、更には彼の仲間達が訪ねてきた事も相まって、どんどんと彼の知らぬ顔を見せられていく。
「もっと、灯香のことを見て・・・・・・?」
募る不安と迫る焦燥感。そんな一面を見せられ、仲を取り持つために皆で海に行ったりして。
「ぜんぶ、あなたに任せるから」
だが、楽しい時間の中。吟子は灯香に理人の事を託し寂しく笑う。まるでいつか別れが来る、とでも言うかのように。
それは一つの真実を示す。吟子が病魔に侵され、もう余命いくばくもないという事を。その真実を知り、更に理人の力になりたいと組んだ投資の為のプログラム。だが、それは間違いだった。そのプログラムに基づき灯香が初めての投資に挑み、多額の負債を出してしまったのである。
仕方のない事だ。投資の世界、それは機械などでは決して介入できぬ、人だからこその戦場なのだから。それを知らなかった彼女を責める事は出来はしない。
「俺と師匠は、いつだって不可能を可能にしてきたんだ」
そしてそれは、吟子の責任でもある。故に吟子と理人は手を組み、団体の力へ個人の力を集め、大逆転の奇跡を起こす為に挑んでいく。その結果は、是非自身の目で見てみてほしい。
吟子の登場により切なく苦く、ヒューマンドラマの様相が強くなる今巻。
前巻を楽しまれた読者様、やはり単純ではないラブコメが好きな読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
株では勝てる俺も、カワイイ女子高生には勝てない。2 (MF文庫J) | 砂義 出雲, えーる |本 | 通販 | Amazon